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好きが高じて、アウトドア料理専門レシピサイト『ソトレシピ』を立ち上げちゃった男に突撃インタビュー

爽やかな風に人々も草木も踊る、グリーンシーズン到来。外でBBQしたり、焚き火したり、キャンプしたりする計画を立てている人も多いことでしょう。かくいうわたしも、そのひとり。でも、外で作るゴハンを考えるのは結構大変で、「網で簡単に焼けるもの」とか、「手間のかからない鍋の煮込み料理」など、いつも同じものに偏りがち……。
まぁそれでもいいっちゃいいんですが、仲間たちとキャンプするときは、なんとなく見映えを気にしたい。そんなとき、この便利な『ソトレシピ』なるレシピサイトを知ったのです!

アップされているレシピをチェックしてみると、手間がかかっていそうな見た目の割に調理工程が少なく、用意する道具や材料がひと目で分かる。それに、ダッチオーブンやスキレット、朝ごはんやスイーツなど逆引きもできる……! 今までありそうでなかった、アウトドア料理のレシピサイトを立ち上げた背景とは? どんなレシピが載ってるの? 色々と気になったので話を聞きにいってきました。

『ソトレシピ』
https://sotorecipe.com/

脱・買い忘れ! 使う食材をLINEに一括送信できる便利機能がキラリ。

――まず、『ソトレシピ』について教えてください。

千秋)『ソトレシピ』は、アウトドア料理に特化したレシピサイトです。おもにアウトドアのプロや料理のプロをシェフとして迎え、初心者の方でも作れる、簡単×おしゃれ×おいしいアウトドア料理のレシピを発信しています。2017年11月7日にスタートし、肉料理からスイーツ、おつまみなど、幅広いジャンルを展開しています。

お話をうかがったのは、『ソトレシピ』プロデューサーの千秋広太郎さん(34歳・写真右)と、編集長の渡辺有祐さん(41歳)

――立ち上げのきっかけは何ですか?

僕は2016年8月に「シーザスターズ」という会社を興したのですが、前職のPR業を継続しつつ、日頃から楽しんでいたアウトドアの分野で、何かやってみたいなと思っていたんです。当初は道具のレンタルサービスなどを考えていましたが、最終的には「自分が好きな料理に特化したものにしよう!」と思い、『ソトレシピ』に至りました。

――『ソトレシピ』のウェブサイトを覗いたとき、今までこういうのなかったな~と思いました。単なるレシピサイトじゃないな、というか。ニーズに応じた検索機能があるし、料理の見せ方もおしゃれで。

千秋)僕がキャンプで料理をはじめたとき、まずダッチオーブンを買ったんですけど、Googleでダッチオーブンレシピを検索しても、おしゃれなものが少なくて、なんかテンションが上がらなかったんですよね。自分がユーザーの立場だったら、見た目もおしゃれな方が作りたいと思うし、みんなもそうなんじゃないかな?と。アートディレクターの方に協力をしてもらい、デザインにはとてもこだわりました。

飲食店のキッチンスタッフ、料理本の編集者、PRイベントのフードディレクターなど、多彩な料理経験がある千秋さん

――買出しリスト機能(*1)はとくに便利ですね。

渡辺)キャンプではおのずと千秋が料理担当になるんですけど、現地で「調味料ボックス家に置いてきました」とか、「ローズマリー買い忘れました」とか、忘れ物が必ずあるんです。これってキャンプあるあるだとは思うんですけど、千秋はとくにそれがヒドい!(笑)

千秋)家で塩とか胡椒を調味料ボックスにちゃんと詰めてはいるんですけど…(笑)

渡辺)買出しリスト機能は、忘れ物を多くしている経験からの発想です。

千秋)僕に限らず、買い忘れはよくあることだと感じているので、僕以外にもこの機能を必要としている人がいるんじゃないかなって。開発者が当事者であり、ユーザーでもあります。

(*1)買出しリスト機能:『ソトレシピ』に掲載のレシピを「買出しリスト」に追加しておくと、使う食材をLINEやメールに一括送信できる機能のこと。簡単に複数人に共有できる

仲間のLINEノートに送信すると、こんなふうにレシピを共有OK

――わたしもよくやってます。ホットサンド作るのに、食パン買い忘れるとか…。

千秋)「買出しリスト」を使うと、買わなきゃいけないものが一覧になり、ひと目でわかるようになります。たとえば、最寄りのスーパーで「パエリア作ろう」って思い立ったとしますよね。そうなったときに、「パエリア作るにはエビと白身魚とトマトと、えーっと…」って考えながら買い物してると、気付いたらスーパーの中をぐるぐる何周もしちゃって、買い物だけで2時間かかってた、なんてこともあると思うんです。

――あー、その状況わかります。事前に誰かが仕切ってくれてればいいんですけどね。キャンプ当日ってなにかと準備でバタバタしてます。

千秋)買いたいものが事前に一覧になっているだけで時間短縮に繋がるし、それでより長い時間キャンプが楽しめたら幸せだなぁって思うんですよね。「買出しリスト」は、まさにそのための機能でもあります。

旅好き・キャンプ好き精神から生み出される、デリシャスなレシピたち

――立ち上げ当初は千秋さんおひとりだったんですよね? 渡辺さんはどうのように関わっていったのでしょうか。

渡辺)千秋とは山でちょくちょく酒を飲みながら、今の仕事にまつわる相談を受けていたので、僕からもアイディアを出していて。去年のゴールデンウィークに二人で残雪の北横岳に登ったとき、双子池のテント場で「レシピサイトでいこうと思う」って話を千秋から聞いて、それなら僕も協力できるなって思って、加わることにしました。

渡辺さんは本の制作会社「フィグインク」を経営し、アウトドアにまつわる書籍を数多く手がける。『ソトレシピ』では編集長として活動

――お二人のアウトドア歴は?

千秋)本格的なキャンプは5年で、旅は大学時代から。今思うとアホすぎて恥ずかしいんですけど、学生時代はママチャリで日本を縦断する旅をしていました。現地のおいしいものを目がけて、健康ランドに泊まったり、野宿を繰り返したり。その辺りから、色々体験しながら、外でおいしいものを食べることの楽しさを知った気がしています。そのときは勢いだけでやっていたんですけど、その後、アウトドアに詳しい渡辺さんと出会って、キャンプや登山に連れて行ってもらうようになってハマりました。だから渡辺さんは、僕のアウトドアの師匠でもあるんですよね。

昨年、二人で登った北岳にて(写真/千秋さん提供)

――渡辺さんは根っからのアウトドア好きだったのですか?

渡辺)僕は子どもの頃からアウトドア派で、地域が主催するキャンプに参加していました。自分で行きはじめたのは、20代の頃。はじめはキャンプばかりでしたけど、次第に「キャンプってやることねぇな」ってなって(笑)。自然と登山にハマっていった感じです。年間で10座くらいは登ってますね。登山スタイルは外絶対テント泊。外でおいしく酒が飲みたいので(笑)

――渡辺さんも料理しますか?

渡辺)全然やらない方でしたね、食べられればなんでもいいくらいで。最近は、ソトレシピのこともあって興味が湧いて、料理がとても楽しくなりました。

道志の森キャンプ場での1枚。渡辺さんが火をおこし、料理は千秋さんが担当することが多いそう(写真/千秋さん提供)

――旅先で出会った料理を、アウトドア仕様にアレンジしているとお聞きしたのですが。

千秋)まだ家で再現の練習中でレシピとして公開できていませんが、“旅するソトレシピ”として、海外旅行で出会ったおいしい料理を日本のアウトドアシーンでも簡単に作れるように、現在アレンジ中です。旅先でおいしいものを食べてもその場限りになる。でも、日常でも旅してる感を感じていたいなって思ったのがきっかけです。なので、現地で料理本を買ってきて、それを参考にすることもあります。今は忙しくて、正直まだ手が回っていないんですが、定期的に発信していきたいな、と。

サン・セバスティアンで食べたピンチョスをソトレシピとして再現(写真/千秋さん提供)
スペインで購入したというレシピブック。英語ですが、盛り付け方などお皿と料理の相性も勉強になります

――“世界各地のおいしいもの紀行”みたいな感じで、アウトドアで再現できるのってなんだか素敵ですね。お酒ともペアリングできたら、もっと食事が楽しくなりそうです。

千秋)そうですね。お願いしているシェフの中に寒川せつこさんという方がいるんですが、最近スウェーデンによく行かれていて向こうのレシピを持ち帰ってきてくれているので、これもどんどん力を入れていきたいですね。今もスウェーデンの伝統煮込み料理「カロップス」をアレンジして掲載しています。

出張ついでに立ち寄ったという、ポルトガル・リスボン(上)とスペインのサン・セバスティアン(下)。食文化の素晴らしい国だったそう(写真/千秋さん提供)

これから追及していきたいテーマは、アウトドア料理×地方創生

――レシピ提供しているシェフの方、千秋さんを含め9名いらっしゃいますよね。プロのシェフから、管理栄養士、インスタグラマーの方までじつに個性豊か。どうやって選出しているのでしょう?

千秋)ベースとしては、“簡単でおしゃれ”という『ソトレシピ』の世界観に合う料理が得意な方を中心に協力をお願いしています。

渡辺)もともとアウトドア料理の分野じゃない人にお願いする、というのも実はポイントで。「アウトドアに慣れていなくても作れるよ」ということをユーザーの方に伝えたいので、凝った料理というよりは、簡単でおしゃれがキーワードですね。

千秋)そうそう。レシピ見てても、たとえば「ロブスターってどこで買うの?」ってなることあるもんね(笑)

――確かに、なかなか見かけない食材が書いてあるだけで、やる気が遠のいていく…。

渡辺)あと、僕は本の編集者という職業柄、日頃からアウトドアに関わる方をいっぱい取材するんですが、誌面には出てこない裏方の人っているんですよね。そのなかにも、まかない料理がおいしくて見た目も華やか、という方がいるんです。これが世に出てないのはもったいないな、と。そういった方にもシェフとして声をかけています。

千秋さんが愛用しているという、モーラナイフ。とにかく持ちやすく切れ味も抜群とのこと

――レシピのなかには、長野県川上村の白菜など、地方の食材にフォーカスしたものもありますよね。

千秋)アウトドア×料理×地方創生をテーマに、地方の食材を使ったレシピもどんどん増やしていきたいと思っているんです。一般の方が興味を持つような、実用的かつおしゃれなレシピにリブランディングして、世の中に発信していくことができたら、より響くんじゃないかと。これはウェブメディアだけじゃなく、リアルイベントも増やして積極的に取り組んでいくべきだと思うんですよね。

――前職で培ったPRのノウハウが生かされているわけですね。

千秋)そうですね。僕がこの春に立ち上げたソトごはん市場に関する調査機関『ソトレシピ総研』も、これまで培ってきたPR力が生かされています。今後は、外で料理をして食べることがメインの“食べるキャンプ!”とか、お肉を網で焼くだけから脱するという意味で、“脱・網!”みたいな分かりやすいワードを作って、盛り上げていこうと画策中です。

渡辺)料理を通してキャンプの体験が楽しく残れば、キャンプすること自体を継続していけるんじゃないかって思うんですよね。

――おもしろいですね。脱・網!

千秋)ほかにも挑戦してみたいことはたくさん。先々にはオリジナルの調理器具も作ってみたいですし、都会でキャンプを感じられるスペースも手掛けたい。それと、キャンプ場もオーナーの高齢化にともない後継者がいないという問題にも直面しているので、それを解消し、次世代へと繋げていけたらいいなと思っています。


立ち上げの経緯から、アウトドア料理を介しての地方創生の想いまで語ってくれた千秋さんと渡辺さん。お二人の活動はソトレシピに留まらず、店舗を持たない飲食店をテーマにしたノマドダイニング事業『ソトレシピKitchen』も手掛けるなど、これからの活動も気になるところ。

さぁ、本格的な外遊びシーズン到来!
簡単おいしいレシピを発掘できる『ソトレシピ』、必ず役に立ちますよ。

取材協力/
『ソトレシピ』
https://sotorecipe.com/

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ライター:
山畑 理絵

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