アウトドアのスタイルは、クルマに宿る。
そう言っても過言ではないほどに、クルマとアウトドアというのは密な関係がありますよね。アウトドアへの旅は、クルマが連れて行ってくれる。クルマ次第で、行ける場所も積める荷物だって変わってくる。
そして、クルマのメカニックなところ、カスタマイズ性がどこかアウトドアギアに通ずる部分があったりして。
アウトドア好きにクルマ好きが多いのも、うんうんと理解できます。だからこそ、周りのアウトドア好きがどんなクルマに乗って、どういう乗り方をしているのか。気になる方も多いのではないでしょうか?
そんな「クルマとアウトドア」の素敵な関係について、たくさんの方々にインタビューをしながら深掘っていこうというのが今回の企画。
記念すべき第1回は、ルノーのカングーが相棒の則包高希さん。埼玉県で「奥武蔵自転車旅行社」を運営するサイクリストです。
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お話をうかがったのは、埼玉県の越生で多くのサイクリストがゴールや休憩処として利用する「オクムサ・マルシェ」。ここは薬膳カレーなどの健康食を提供し、地元の産物も販売、小さなイベントスペースもある人気店。則包さんも日々通う常連客です。
——まずはじめに、「奥武蔵自転車旅行社」の活動内容について聞かせてください。
埼玉県は「じてんしゃ王国」って呼ばれるくらい自転車が盛んな県なのですが、僕はここ奥武蔵のエリアで、ロングライドからヒルクライムまで7種のツアーをできるだけ毎月実施しています。四季に触れ、歴史やグルメを楽しむ、初心者でも安全・安心な内容にしていて、ルートはクルマとはほとんど遭遇しないところばかりです。おかげさまでリピーターが8割くらいになっています。
——このような活動をはじめられたきっかけは何だったんですか?
最初は都内の西側を走っていたんですけどクルマも多くて。それで東に向かい人気の荒川エリアへと移っていったんです。それでも飽き足らずに北上して埼玉にたどり着きました。
それで埼玉に通うようになっていたんですけど、奥武蔵の有名な峠を走ろうにも移動時間とか考えると大変で。往復で160kmくらいありますからね。しばらくして、坂戸に自転車用のアパートを借りて根付くようにしたんですよ。それでどんどん地域について詳しくなって、良いルートもたくさん知りました。
そこから、友人を連れて埼玉のおすすめルートを案内するようになったんです。それが意外に好評で。これってもしかしたら本格的にやったら喜んでくれる人いそうだなって思ったんですよ。それで今に至ります。
——クルマは以前から乗られていたんですか?
いえ、それがついこの1年の話なんですよ。大学入ったり社会人になったりすると皆いっせいに免許取りはじめるじゃないですか。僕は人と同じなのが嫌で、免許をとらなかったんですよね。そしたらタイミング逃してずっとクルマは乗っていませんでした(笑)。
——そうなんですね!すごく乗りこなしているイメージがありました。時間を空けて最近になって乗りはじめた理由は何なんですか?
これも奥武蔵自転車旅行社で必要になったからなんです。ツアーでは必ずサポートカーがついてるんですけど、これはボランティアスタッフにお願いしていて。日よってはドライバー揃わないことがあるので、自分で運転できるようにならないとダメだなって思ったんです。
でも、もし昔からクルマに乗っていたら今のように自分で自転車のルート開拓とかしてなかったと思いますよ。もっと言うと自転車にも乗ってなかったかもしれません。なので、タイミング的には今が正しかったんだろうなって思ってます。自転車で楽しんだルートを、今度は別の角度からクルマで楽しんでみたりできますし。
——確かに、今となれば自転車に乗る人の気持ちが分かった上でクルマに乗りますし、逆もまた然りですよね。クルマに乗ってみて、どうでしたか?
いやぁ、楽しいですね!この前、家のかかわりで和歌山まで車で旅したんです。電車だと時間もお金もかかりますから。それで思ったんですけど、高速道路のロングドライブっていいですね。周りからは「長時間は疲れるよ」って言われましたけど全然そんなことなくて。
——もともと自転車に乗っていて、その土地を知るとか地理的なことに関心があるのも大きそうですね。
そうですね。それもあって、初めて通る道はナビ通り行くのが心配なんですよ。ちょっと信用できないというか。だから事前にかなり下調べするようにしています。自転車のコースを作るのにもストリートビューで調べたりするんですけど、それと同様ですね。このあたりは自転車に通ずる部分が多くあると思います。
——カングーはどういった経緯で選ばれたんでしょうか?
それまでクルマとは無縁だったので、何が良いのかさっぱりわからなくて。ツアーのサポートで使っているクルマはEVERYだったので、それと同じか、同じように小さくて自転車が積めるものってくらいしか考えていませんでした。あとは、自転車使い以外でも、旅ですよね。家族ともクルマに乗ると思うと軽自動車でロングドライブはちょっとイメージ湧かなくて。
ある日、クルマに詳しい友人が「則包さんにはカングーとかに乗って欲しいなぁ」って言ってきたんですよ。当初カングーのこと全く知らなかったんですけどね(笑)。それでカングーのこと色々調べたんです。昔のムック本とか買ってみたりして。そしたらちょうど先ほど話した和歌山の地へドライブしたコンテンツが載っていて。それで「あ、カングーでここまで行けるんだ」と思ったのがきっかけのひとつですね。
——カングーはアウトドア好きに人気な印象があります。則包さんはカングーのどのあたりに惹かれたんですか?
まず、自転車を詰めるカーゴフロアの広さですね。前輪を外せば3〜4台は積めます。その上で観音開きというのも魅力でした。カングーのリアハッチは180度開きますから、自転車の出し入れがとても楽なんです。
あとは最近のモデルはシティ寄りになってしまいましたけど、僕の買った2006年式とかの頃のフォルムが好きですね。カングーについて色々調べていて昔のモデルを知って、「これはいい」と思ったんです。
男女の差っておもしろいですよね、男性は大体「カングーいいですよね」って言うのに対して、女性は「このクルマかわいい!」って言うんです。僕はメカニックのことはよく分からないので、わりと女性寄りの視点でカングーを選びました。
——実際に乗ってみてどうですか?
意外にパワーがあるというか、スピードも出ますし、人数乗ったり荷物を積んでもその影響を感じないですね。これは軽自動車とは分かりやすい違いだと思いました。これなら確かに和歌山までのロングドライブも全然苦じゃないですよ。
——何かご自身でカスタマイズされたところはあるんでしょうか?
上に自転車を載せるレールはカスタマイズしました。カングーは普通のレールに比べて縦の間隔が空いてて載せられなかったんですよね。なので、そこは他社製のアタッチメントを追加して、横を計4本にして載せられるようにしました、苦肉の策ではあるんですけどね(笑)。
——クルマに乗っていて、おもしろいことってなんでしょうか。
自転車ではもちろん高速道路は走らないわけなので、知らない景色がいっぱい広がっているんですよね。知らない道路もいっぱいある。伊勢湾岸自動車道なんか最高ですよ、自然に入っていく感じと見晴らしが素晴らしい。クルマに乗ってまだ1年弱ではありますけど、すでに心躍る発見がありますね。今のところ旅と自転車の運搬という形でクルマを使っていますけど、足もとはまず旅をもっとしたいなと思っています。東北の方とかほとんど行ったことないですし。
——今後、広げていきたい楽しみ方とかはありますか?
登山道を登ってみたいという気持ちはあります。山は今までもヒルクライムという形では登っていますが、登山道ってほとんど歩いたことなくて。これも、自転車とクルマと近い関係があるんじゃないかって思っているんです。クルマに乗ったことで自転車にとっても新たな発見があったように、登山道を歩くことで、自転車だけでは感じられなかったことを知れるでしょうし、山の楽しみが広がりそうですよね。
それと、キャンプにも興味あるんですよね。片付けが面倒なのでなかなか手を出せないでいるんですけど。車中泊もやりたいですし、やりたいこといっぱいですよ(笑)。
ーー素敵ですね、また新しい人生が広がっている感じで。それっていうのはカングーに乗りはじめてから欲求が沸いてきたんですか?
そうですね、まさか自分がこんなに運転が好きだなんて思わなかったんですよ。本当に楽しいです。
その中で教えて欲しいなぁと思うのが「停め方」です。教習所でも「走り方」を教えることがほとんどじゃないですか、でもそれって走り始めれば大体できると思うんですけど、停めたい場所にきちんと停めるというのは初心者からするとハードル高いですよね。女性でも駐車が怖いからって運転しなくなる方もいるんじゃないかと思います。走ったら必ず停めるわけなので、もっと教習所で停め方をしっかり教えたら、ペーパードライバーも減りそうな気がしますね。
好きが高じてはじめた自転車の仕事。そこから生まれたクルマという新しい趣味。さらにそこからまた新しい趣味の広がりが生まれつつある則包さん。歳を重ねるごとに、新しいことへのチャレンジや他人から教わる、ということに躊躇しがちですが、則包さんは可能性をどんどん広げています。
最後に則包さんは「迷ってるくらいならやっちゃおうと思うようになった。若い頃は理屈っぽく考えて楽しんでいなかったので」と話してくれました。
そのひとつのきっかけとなったのがカングーとの出会い。自分の愛車が次にどんな新しい地に運んでくれるのか。アウトドアフィールドは日本中に広がっています。まだまだクルマがもたらしてくれる出会いが楽しみでなりません。
* 奥武蔵自転車旅行社
http://okumusashibiketours.com/
* オクムサ・マルシェ
https://www.facebook.com/okumusagarage/