ベテランの人と一緒にできれば良いけれど、身の回りにそんな人はいない。なんとなく見た目や説明書通りにやっていれば形になっちゃう。
キャンプを始めた方の中で、そういう方も多いのではないでしょうか?けれども正しい知識と正しいやり方で行うと、ぐっと楽に、そして楽しくなるのがキャンプ。
なんとなくなぁなぁでここまで来ちゃったという方、
キャンプ始めてみたいけど詳しい人が周りにいないからわからないという方、
そんな方々にお届けする「アウトドア歴40年の達人に訊く!」連載です。
教えていただくのは、アウトドア歴40年の達人、寒川一さん。
神奈川県の三浦半島を拠点に、災害被災時に役立つアウトドアのノウハウを、楽しく、実践的に学ぶ体験型の防災キャンププログラムを提案する「STEP CAMP」を運営し、焚き火カフェというユニークな取り組みもされています。
そして教えを仰ぐのは、フードディレクターのさわのめぐみさん。
さわのさんは、物語に登場するお料理を再現、アレンジするなど、お気に入りの物語にもう一味加えた楽しみ方を提案する「ものがたり食堂」を定期開催されています。料理のプロだけど、キャンプは完全なる初心者。この連載でキャンプのいろはを学び、立派なキャンプ飯を作るのが裏ゴールです。
今回のテーマは、アウトドアの名脇役、ハンモック。あるのとないのとでは快適さに雲泥の差が出るハンモックですが、意外と知らない?正しい楽しみ方を教えていただきました!
STEPは全部で8つ!さぁそれでは見ていきましょう。
まずはハンモックを張る場所選び。そこから見える景色や風通しなど、好みは色々あると思いますが、ここでは誰でも快適に過ごすベースとなる選び方をお伝えします。
高くなり過ぎず、低くて地面に付くことがなく、きれいな放物線を描けるのは5メートルが目安。もちろんハンモック自体のサイズにもよるところではありますが、大体の目安として覚えておきましょう。5メートルというと感覚で分かりづらいですが、一般的な車が入るくらいの間隔だと思ってください。
ちなみにベテランになると「ハンモック目」とやらが養われるようで、感覚でハンモックに最適な場所が掴めるそうです。その目、是非とも持ちたい!
目安としては、両手で木の幹をつかんだ時にいっぱいの太さかどうか。太い分には良いですが両手よりも細い場合は心もとないです。
木が腐ってないか、立ち枯れていないかも確認しましょう。負荷をかけた時にボキッと折れてしまうと危険です。
まず見るのは、柔らかいかどうか。ここが固かったりコンクリートだったりすると落ちた時などに危険です。
そしてもう一つ大事なのがフラットかどうか、ということ。
仮に斜傾になっていると一見乗りやすいように思えるかもしれませんが、降りた時に勢いよく転げ落ちてしまうことも。乗るまでではなく、降りる時のことも考えた場所選びが大事です。
場所の条件がクリアできたら、いよいよハンモックを張っていきましょう。
まずはじめにすることがツリーウェアといういわゆる木の保護パットを巻いてあげます。これは木に負担をかけないためにも重要な養生処理です。
ここがハンモックの頂点になりますが、高さの目安はちょうど目の高さくらい。この高さだと、ここを起点に放物線を描き、真ん中の一番低い部分が腰の位置くらいの高さになるんです。そうすると座りやすいというわけですね。
この高さがうまくいかないと何度もはり直すことになるので、意外に重要なポイントです。
これで木の養生はOKです。
皆さんはこの処理をしっかりされていますか?自然あっての楽しみなので、しっかり保護してあげましょう。
ツリーウェアを巻いたらハンモック本体を張っていきます。
ハンモックには、布地のブラジルタイプと手編みのメキシコタイプの2種類あります。今回は寝心地の良いメキシコタイプを。
先端の輪っかになっているところを「アイ」と言いますが、取り出す時はこのアイを持って取り出すのがポイント。ハンモックはサイズが大きいので、こうして両端を重ねた状態で出せば絡まらずに済みます。
ハンモックを出し終えたら、まずはこうして設計の全体絵を描きましょう。そうすることで縛る位置や、真ん中の座る位置の高さのイメージを湧かせることができます。よく気が早まってすぐに張ろうとしてしまいがちですが、そうすると何度もやり直したりすることになります。
設計を描けたらロープを木に結んでいきます。
アウトドアロープはシンプルな1本ですが、これを真ん中で単純に半分に折っておきます。
先に巻いたツリーウェアの中央をぐるりと周回させ、
先ほど折ってできた輪にもう片方を通します。
出来上がりはこちら。シンプルで簡単ですね。
吊るすためのロープを木に結んだら、続いてハンモックと繋げます。この繋げる際の結び方が大事なポイント。簡単で強力なロープワークをご紹介します。
ツリーウェアとの結び目から15センチくらいのところで先端のアイの下からロープを通し、
アイの下をぐるりとくぐらせ、
手元のロープの方で軽く輪を作り、それをアイの上にできあがった輪にさらに通します。
そしてアイの下の部分をグッと下に引くと、
互いに絞め合って、このようにしっかりと固定されるんです。アイを下に引っ張るので、繋ぎ目は開始位置より下に下がるため、その程度を見ながら多少開始位置の高さは調整しましょう。
これをもう片方のサイドでも同様に行います。この結び方は解くのも簡単なので是非覚えてくださいね。
これで完成!とすぐに座るのではなく、しっかり張れているかを確認します。
このように座る位置で上から体重をかけ、強度を確認。体重をかけることでどれだけ下に下がるかもこれで確認することができますね。この体勢であれば、仮にずるっと滑っても膝をつく程度なので大丈夫。この工程を経ることで、ロープもさらに縛られ強くなります。
最後のチェックは、自分自身。鍵やチェーンなど、ハンモックに引っかかりそうなものを身につけていないか確認しましょう。ハンモックと引っかかって思わぬトラブルにならないよう気をつけて下さい。
さぁいよいよ座りましょう!座り方にもコツがあります。
ハンモックの真ん中に座りたいので、柄に注目します。だいたいメキシコ式の中央部分は色が周りと違うことが多いため、それを目安に座ります。
まずこうして中央部分に腰を下ろし、
万が一バランスを崩して頭から落ちた時に危なくないよう、頭を覆い被せ、
後ろに体重を預けます。
そして足までハンモックに乗せたら完成!
ハンモックはこのようにハンモックに対して垂直に座る・寝るのが正解。こうすることで縫い目がしっかりと広がり、全身を安定して包み込んでくれます。
よく見かける、水平にこうやって寝るのは実は誤りで安定しません。正しい方の寝方をするとその差がはっきり分かりますので是非お試し下さい。
こうやって斜めに寝るのも効果的。全身まっすぐ伸ばして、安定して寝ることができます。
登山に最適な、軽くてコンパクトになるハンモックもあります。座り方の要領は変わらず。登山の途中休憩でこうしてハンモックで寝ることで一気に体力が回復するそう。寒川さんはいつもこのハンモックを携えて山に向かうそうです。
見た目もキャッチーでまったりとリラックスできるハンモック。なんとなく見よう見まねで張れて寝ることはできますが、ちょっとした豆知識や知らないことも多かったのではないでしょうか?
夏はハンモックに揺られて起きたら虫刺されが!ということもあったかと思いますが、これからの季節は虫が少ない時期。是非ハンモックに揺られて優雅なリラックスタイムを過ごしてください。