前編では、生態を知ることでアウトドアがもっと面白くなることをご自身の原体験から語ってくれた三野さん。後編ではさらに自然やアウトドアについての深い考察をお話いただきました。
——キャンプはいつから始めたんでしょうか?
結婚してアウトドア道具も増えて、登山に行った先々でキャンプをやる人を見てはいたので。そのあたりからですかね。旦那もアウトドアが好きでお互いフィールドは一緒だったので、自然と。
最初のうちは、キャンプはアンチだったんです。UL派だったし、全然自然じゃないじゃんって。
でもやってみたらULでもどっちでも楽しみ方としてはアリだなって思います。分けて考えれば良いし、実はかけ離れたものでもないんです。
——かけ離れていないというと?
サーフィンも山も結局繋がっているんですよ。サーフィンする時も山から流れて来る水で地形が変わってたりしますし。キャンプだって同じですよね。登山のフィールドは人が住めない地帯で、キャンプは里山で楽しむ、という一見は違いがありますが、結局は山と山の麓だったりする。
生態としては繋がっているんです、自然なんですから。
——登山派とか、キャンプ派とか。自然においては関係ないと。
仕事で東北に行った時に、またぎの人たちの生活を見たんです。彼らは山に入り、狩猟を自分たちでやるし道具も住処も自分たちで作る。登山もキャンプだってライフスタイルのひとつになっていたんです。今で言う“キャンプだよね”みたいなことって、昔から日本では生活の一部として行われていたんですよ。自然のことを全部知ってる、だからできるんです。
私たちも、キャンプ場じゃなくてもキャンプしていいところを見つけてやってます。そこで足りないものを用意したり、作ってみたり。
人って何かと名前を付けたがるじゃないですか、フレーム化というか。DIYとかキャンプとか。
もともとはその人のライフスタイルでしかないと思うんです。だから個人のライフスタイルを突き詰めていくことに尽きますよね。そこに○○派とか、関係ないです。
——そうですね。そしてフレーム化によって、一時的な消費になってしまっている印象があります。
浅いもの、過ぎ去っていく消費のされ方をしていますよね。ただ単に楽しむだけでなく、“もっと知りたい”という機会が少ないんじゃないかなって。
たとえば、なぜこの日本酒がうまいのか、って考えてみる。それは水が良いから。ここの水が良いのは近くに良質な水源となる地形の山があるからとか。そんなことを感じながらその山で登山とかキャンプをやるのってなんて贅沢!って思う。
——そういうのが分かると楽しみが広がるし、深まりますよね。
根本から知るとすごく楽しいんです。昔から通じているものが今になっていたりします。今ではキャンプ飯の主役のようなダッチオーブンもその1つ。2回目にも続く趣味になりうる情報を伝えたいですね。なかなかそういうこと伝えてくれる場がないので。
——それで三野さんの記事はハウツー系とか知識系の記事が多いんですね。
そうですね。ただ、上から言われたり全部教えられたりしても駄目で、自分で体感することが大事だと思うんです。だからそのきっかけを提供するようなことができたらと思っています。
今のアウトドアブームが、ライフスタイルとして日常に活きるようなところまで入っていけるかどうかですね。
——一方でアウトドアは非日常であるからこそ意味がある、という考え方もありますよね。
この考えを広めるのが良いことなのか、こういった考え方を持つことが良いことなのか。そこに誘導した先に何があるのかはまだクリアになっていなくて、考えています。
——これは議論が分かれるところですよね。
ただ、自然での暮らしに1度触れると都会に戻ってくる人って少ないです。それって当たり前というか、人間ってやっぱりそういう方が気持ちいいんだろうなって思います。自然には人を落ち着かせるパワーがあるんですよね。
元来、人間は自然の中で暮らすことにハードルが無いはずが、1度都会暮らしに慣れると不安になったり、不便に感じたりするんだと思います。
——キャンプはどういったところが好きなんですか?
ひとつは食事ですね。キャンプって大体食事を中心に時間が過ぎませんか?(笑)
最初のうちは食材も用意していたんですが、それに違和感を覚えるようになって現地調達をするようになりました。その季節にそこで採れる野菜や食べ物を取り入れてキャンプ飯を作るようになったんです。
そうすることで土地のことも知れるし、キャンプ場が綺麗だからそこに行こうとかではなく、敢えてそこに行こうってなる。そこで生きている人たちの生活にお邪魔しに行くみたいな考えで行くと楽しいですよ。
ジビエ料理が最近流行っていますが、それも何故そうなったかを知ると色々と理解が深まります。
それと、キャンプはみんなで不便を乗り越えようとするところが楽しいですし、スキーみたいに、終わったら宿に戻って酒を飲むとかじゃなくて、ずっと外にいる。そういう小さな贅沢ってありますよね。
——ものに縛られたり、時間に縛られたり、お金に縛られたり。そういうのがなくなる。
派手なことは求めず、人間のだけを突き詰めて楽しむことがキャンプの良さだなと思います。日が昇ると同時に起きて、日が沈むと寝るじゃないですけど、そんなシンプルな過ごし方をするために寒い日は焚き火をしたり、悪天候でも耐えられるテントを張ったり、動いたあとは美味しいごはんをみんなで食べる。家だとボタン一つでなんでもできてしまうから時間を持て余して暇って思うけれど、キャンプだったらそうは感じないですから。
でも、今は便利なところに住んでいるから、家に帰るとまた全然違う。その中にどれだけアウトドアで活かした知識を取り入れるか。そして、次は自然豊かな何もない田舎に自分たちの手で家を建てて生活してみたい。
そこの生態を知るためにも、今度狩猟免許を取ろうと思っているんです。
——狩猟ですか、移住計画ですね。
日本の自然は豊かといわれていますが、深刻な問題も多々抱えています。ジビエ料理が少しづつ浸透してきていますが、なぜそうなったかを知ると興味も深まります。
知識をまずつけることで、それがいいのか悪いのかを自分なりに判断したいんです。答えがない世界ですからね。興味があるならやってみて判断すればいいと思ってます。
——今後、やってみたいことはありますか?
街道をひたすら歩く、ということをやってみたいですね。山が多い日本に生活の行き来のために道を引いたわけです。そこを歩くことでそこで生きる人たちの生活がわかるし、土地の気質を体感することができます。キャンプの要素も登山の要素もある歩き旅に興味があります。先日、旧中山道を、岐阜の中津川から山梨までの区間歩いて旅しました。
登山だと登る達成感はあるけど、ゴールがあり終わってしまう。道を歩くのはどこまでも続く感じ。どこから歩いてもどこで終わってもよいところが魅力的でいいなって思っています。
何事も知ることからはじめ、アウトドアをより楽しんでいる三野さん。見た目に注意が行きがちな昨今のアウトドアブームですが、そこで自然の良さを感じたなら、次は一歩踏み込んで、深く知ることを始めてみてはいかがでしょうか?きっと人間らしさのひとつが垣間見えると思います。
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