2016年7月24日日曜日、明朝はまだ少し肌寒さが残る長野県原村。
快晴にも恵まれ、この日八ヶ岳自然文化園で開催される「山の日サミット」の準備は着々と進んでいきました。
この日は、「信州山の日フェスタ2016」と「Little Mountain Mall」が同時開催され、多くの人で賑わいました。
それぞれのイベントの様子と、山の日サミットの今後の展開も踏まえて、読者のみなさまにお届けします。
自然文化園のピクニック広場で開催されたLittle Mountain Mallは、山にちなんだ様々なジャンルのお店が集まる小さなショッピングモールです。
山や自然を切り口に、食事からアパレルまで様々なお店が出店し、多くの人で賑わっていました。
中では、小さな子供も楽しめるワークショップも開かれており、老若男女が自然を楽しめる要素がもりだくさん。
晴れ渡る自然文化園のピクニック広場に、にぎやかで素敵な空間が終始広がっていました。
このフェスタは前日23日の夜の星空映画祭からスタート。
24日は開会式に始まり、森のコンサートやトークセッション、ゆるキャライベントなどで大盛況でした。
午後13時からいよいよ山の日サミット本番がスタート。
山の日サミットは長野の環境や八ヶ岳に関係する各所からの「活動報告」、八ヶ岳を始めとする山やその環境に関して議論を行う「パネルディスカッション」、そして最後に山の日サミット実行委員から今後の取り組みの「活動宣言」と全三部にて構成されています。
モデレーターであるルートデザイン代表・津田氏のご挨拶を皮切りに、各所の報告が始まります。
一人目は公益財団法人キープ協会 環境教育事業部 事業部長である増田直広氏。
今回は増田氏が携わる環境教育の取り組み、JOLA(ジャパンアウトドアリーダーズアワード)についてご報告されていました。
増田氏「この取組は、アウトドアでの体験を通して日々の変化に対応できる人材、つまりアウトドアフィールドで地球の未来を支える人を育てることを目的としたアワードです。
自然を通して感じること、自然を通さなければ感じられないことはたくさんあります。そういった体験を通して、独創性や影響力を持って取り組んでいる方を増やしていきたいと考えています。」
JOLAは推薦制での応募のみ可能となっており、自然を切り口に教育に注力している方であればどなたでも対象だそうです。
詳細は こちらから。
続いてご登壇なさったのは、長野県環境部自然保護課 田中達也氏。
信州の山岳環境を守るための取り組みをご報告されていました。
田中氏「山岳環境を守る取り組みとして、野生動植物について絶滅の危険度を段階的な指標に示したリスト“RED LIST”を発行しています。10年の間に絶滅危惧種が259種も増えてしまったことを受け、実態調査を始め、ニホンザルの追い払いやライチョウの保護体制づくり等、様々な活動を県として行っています。」
「また人と生きものパートナーシップ推進事業と題しまして、県内で保全活動を行っている団体と、環境意識の強い企業や学校とをマッチングさせる活動も行っております。主に、信州の生物多様性を保全するため、企業さまや団体さまとパートナーシップ協定を締結し、様々な形で取り組んでいます。」
これを機会に活動に実際に興味を持った方もいらっしゃったそうです。
長野県の活動については 詳細は こちらから。
第一部報告会、最後の登壇者は硫黄岳山荘グループ社長、浦野岳孝氏。
八ヶ岳の魅力と高山植物や山々の危機的な状況を写真を用いてご説明なさっていました。
「今私達の目の前に広がる八ヶ岳の美しい景色、そしてそこにある高山植物は、何万年も前から積み重ねられた様々な事象の結晶です。それがこのものの5年でなくなってしまうかもしれない、それ程の危機的状況です。関心のある人は更に詳しく知って頂く機会を、関心のない人にもまずは知ってもらうキッカケを私達の山小屋から与えられればいいなと思っています。」
八ヶ岳の数ある山小屋の中でも率先して、多くの取り組みを実施されている硫黄岳山荘グループ。
取り組みの詳細と浦野氏のインタビューはこちらから。
報告会の後は、パネルディスカッションが続きます。モデレーターに増田氏、パネラーに浦野氏、大西氏(生態系各研究所)、堀田氏(文筆家)、伏見氏(八ヶ岳の森連絡会議会長)を迎えスタート。
各パネラーの自己紹介と取り組みを話した後、八ヶ岳の課題とそれに対しての取り組み、アウトドアアクティビティを楽しむうえで登山客やアウトドアファンはどのように自然と関わっていくべきかなど、興味深い議論が繰り広げられました。
このディスカッションを通して語られていたメッセージは、「知ること」そして「考えること」。
まずは自分たちの住む地域、そして山の実情がどうなっているかを「知る」。そして自分には何ができるのかと「考える」。
アウトドアアクティビティを楽しむ一人ひとりがそういった意識を持つことが大切だと、口を揃えておっしゃっていました。
「環境にローインパクト、つまり影響を与えないのは当たり前。ポジティブインパクトをどう与えられるか、それをもっと考えていくべき。帰りの山道でゴミを一つ拾うだけでもそれはポジティブインパクトになるのではないか」と堀田氏。
終わりには聴講者からも質問が。住民と環境保全に取り組む最前線とが交じり合う瞬間でした。
ディスカッション終了後も控え場所で熱心な議論が展開されていたようです。
山の日サミット、締めくくりは実行委員によるサミットプロジェクト活動宣言。
サミットプロジェクトとは、『アウトドアアクティビティを楽しむ人々が「それぞれの立場でできることをする」とし、自然を守る活動へ参加していくことができる機会を作る』、というもの。
山の日サミットはその宣言、報告をする場であり、プロジェクトとして年間を通して活動します。
今年はその第一弾として、シカの食害対策を実施。
西岳・編笠山を拠点とし、そこでの調査において必要な人材と資金をクラウドファンディングにて募集しています。
数々のアウトドアメーカーやメディアも参加しており、.HYAKKEIもその一員です。
ご興味のある方はこちらから。
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いかがでしたか?
山の日、新しくできた素敵な祝日です。
貴重なお休みの日に自然と戯れることはもちろんですが、改めて普段触れている自然や環境、そして山について真剣に考えてみる、感謝の気持ちをアクションに起こしてみるよい機会なのではないでしょうか?
まずは現状を知ること、そしてできることを考える。
みなさんも是非アウトドアを楽しむ際は、これらを胸に自然と接してみてください。