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シンプルに生きるヒントがここに。1000km歩いて感じた海外ロングトレイルの魅力

歩いてきた海外のロングトレイル

20kgのザックと共に1000km以上を歩いた。重いけれど重くない。家にあるもの全てを背負うことができる人が何人いるのだろう。衣食住の全てが20kgに詰まっている。

私は2013年にアメリカのジョン・ミューアートレイル(JMT)とハイシエラトレイルを繋ぐ500㎞、2014年にインド・ラダック地方のザンスカール・クラッシックトレイル148㎞、2015年にスウェーデンのクングスレーデン450㎞をソロで走破した。

日本では感じられないスケール、名もなき湖の青さ、美しく抜けるような空。偶然出会った温泉。どこで寝てもいいし、たき火ができるエリアもたくさんある。すべて独り占めできてしまう贅沢さ。そんな山頂を目指さない山旅を楽しんでいる。

ロングトレイルの魅力

ロングトレイルの良さは非日常が日常になること。エベレストのように一握りの人たちしか登れない偉業ではなく、誰でもが挑戦できること。一番難しいのは長期間休みを取ることだ。

毎日歩くというシンプルな行為

夜明けとともに起き、アルコールストーブで湯を沸かし「フゥー」っと深呼吸しながら、冷えた身体にコーヒーがすっと入ってくる。

苦味と香りを脳が感じ、1日が始まることを実感する。

美味しくないオートミールを流し込みながら、寝袋をスタッフザックに押し込み、片づけをしてテントをパッキングする。

地図を眺め、今日歩く場所を確認して出発する。

ここまで1時間30分。

習慣化され今までよりも早く準備できる小さな成長を感じる。どこからか鳥の「ギィィィ」という鳴き声が聞こえる。学生時代に読んだ小説のシーンがよみがえる。あとはひたすら歩く。これが私の目指すシンプルライフの一つのカタチだ。

歩く理由

同僚や友人に「歩いているとき何考えているの?」とよく聞かれる。

「目の前のことしか考えてない」

と答える。

「今日はどこまで歩こうか」

「水は補給できるか?」

「行動食はまだ我慢しよう」

「良いテント場はないか」

今あることに集中すること。街で暮らしていると将来の不安に苛まれるときもあるけど、余計なことを考えずに済む。「禅や瞑想に近いのかな」と同僚が教えてくれた。

ロングトレイルの共通認識を探る

そもそもロングトレイルってなんだろうか。「距離」、「日数」、「1度は食料を補給する必要」、「高みではなく水平移動を楽しむ」など調べてみても、広辞苑に載るような定義はない。ただ個人的には、街での生活を懐かしむのに1週間はかかるので、それを基準にロングトレイルかどうか決めている。だから定義は自分自身で決めてみてはどうだろう。

一般的な山歩きとは違う、1つのポイント

例えば、30日間のロングトレイルを歩く計画を立てる。ソロで30日分の食料をザックに詰め込む、そんなハイカーを私は知らない。現地調達できる強者もいるだろうが、食料と燃料をどこで補給するかを計画するのが一般的だ。

トレイル上に町や山小屋があればそこで補給できる。ない場合はトレイルから外れて町に行って補給するか、デポできる場所があれば事前に送る必要がある。

ロングトレイル後の変化

1ヶ月以上歩く生活で、背負っているものだけで生きていけることを体感した。シンプルに生き、執着せずに生きるヒントがロングトレイルにはあると思う。まずは自然のなかに浸り、体から毒を抜くように、必要のないモノに囲まれた生活から抜け出したい。人間中心主義ではなく、人も自然の一部であることを肌で感じる。トレッキングが日常になる瞬間を求めて、私自身歩き続けていきたい。

私の影響を受けたライター加藤則芳さんの言葉を伝えたい。「メインの森をめざして アパラチアン・トレイル3500キロを歩く」より抜粋した。

「よりシンプルに生きることの可能性を知ったこと。幸せに生きるためには、それほどたくさんのものは必要ではない」

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ライター:
白井 康平