自然とは、はたして人間のものなのでしょうか?
自然を楽しむのと同時に、自然に対して十分な知識を持ち、リスペクトする心を持つ。自然に触れるきっかけを持った時に、そういう大切なことをも教えてもらえたなら、もっと人と自然は共に生きられるのかもしれません。
長野県茅野市にあるCLUB3719は、そんな大切なことを体験を通じて教えてくれるアウトドアクラブです。
お話をうかがったのは、CLUB3719を運営する元プロマウンテンバイクレーサーの檀拓磨さんと千早さん。クラブのコンセプトや自然と共生するお二人の暮らしは、自然志向のライフスタイルのヒントが散りばめられていました。
拓磨さんは、世界5ヶ国でチャンピオンになったという元マウンテンバイクレーサー。そんな輝かしい経歴を持つ拓磨さん、素人目で見ると「なぜ?」と短絡的に思ってしまいますが、このアウトドアクラブを開いたのにはある想いがありました。
「マウンテンバイク(以下MTB)は自然の中でやるものですよね。自然が相手なのでMTB以外にもたくさんの知識を持っておく必要があるので、私もしっかりと学びました。そして何よりも、自然のおかげで成り立っているスポーツであり、自然に遊ばせてもらっている。それを今までは雑誌などのメディアを通じて発信していましたが、“リアルな場”も合わせて両輪で伝えることが必要だと10年前に感じたんです」
美しく整備された空間と背後に広がる森、そして山を舞台に提供されるアウトドア体験は実に多様です。拓磨さんによるMTBのコースはもちろん、子供たち向けに開催される「少年キャンプ」やアウトドアBBQ体験、千早さんによるアウトドアヨガ、そしてハイキングなど。拓磨さんのアウトドアスキルが存分に発揮されています。
「私は東京で生まれ育ち、アパレルPRの仕事をしていたのでアウトドアや自然など全く接点はありませんでした。虫も嫌いでしたし(笑)。でも、主人と出会って生活がガラリと変わって。旅先のハワイやサンフランシスコでヨガを学んで、今はここでアウトドアヨガのインストラクターもやっています。都心だとヨガって狭いスタジオの中でやりますが、大地とのつながりを感じるのが本来のヨガなので、アウトドアでやると本質的にも全然違いますよ。」
クラブから見晴らせる茅野市、そして先に見えるのは八ヶ岳。こんな優雅な場所で自然体験ができる機会はそうないのではないでしょうか。
「固定観念を変えたいと思っているんです。キャンプひとつとっても、最近は変わりつつありますが、10年前は“快適ではない窮屈なこと”というイメージが強かった。でも本当はそうじゃなくて、自然の中でできるちょっとした贅沢なんですよね。そういうことを、ここでの体験を通じて感じてほしい」
宿泊のお客様は外の芝生でキャンプをするのもよし、併設されているガレージでテントを張ったり2階の寝室に泊まったりすることもできます。本格的なアウトドア体験ながら、そのハードルを下げる快適な空間作りもこのCLUB3719の魅力のひとつです。
シャワールームの天井は開放式。屋根を開けると目線の先には青々とした森林が。まさに文字通り「森林浴」を全身で楽しめます。晴れた日の空の下、アウトドアで流した汗をここで流したいですね。
クラブの居住空間から先にある森の入り口には「MOUNTAIN」という看板が設けられています。実はここに、最も大切にしているコンセプトが反映されているんだそうです。
「僕らは自然の遊び方を提供しています。それはMTBやキャンプ、登山、といった縦割りの考えではなく、自然そのものに向き合っているんです。そして、遊ばせてもらうからには自然へのリスペクトがある。この看板はまさにそのリスペクトの象徴。『ここから先は自然の中に入り込むんだよ。だからしっかりご挨拶して入りましょうね』ということをお客様には伝えてます。」
逆に森から帰ってくるとゲートには「YARD」の看板が。ここから人里に戻るという意味を伝えています。
「足を踏み入れる時にしっかりご挨拶できていれば、戻ってこのゲートをくぐる時にも『ありがとうございました』と、意識せずとも自然に対して感謝の言葉を伝えられるんです。」
この自然に対するリスペクトを大事にする考えは、クラブの位置取りにも反映されています。CLUB3719は茅野市の街のはずれであり、森の入り口でもあるところに位置しているのです。
「私も妻も都市での生活が長かったので山奥で暮らすのは厳しかったんですよね。街にはいたい。けれども自然が好きだしリスペクトの想いが強いから近くにいたい。そういう距離感がこの場所にはあるんです。」
リスペクトの視点は、人間目線ではなく自然目線でのケアにも及ぶ。
「登山もしますが雨の日や前日が雨の時は登らないようにしています。表土を崩してしまうので自然にとっては良くないんですよね」
檀夫妻のその暮らしも自然志向。その暮らしのスタイルやひとつひとつの小物など、お客様が自身の家を作る時の参考にされることも少なくないそうです。
たとえば、窓にはカーテンやシャッターがありません。東京で暮らしていた時はお二人とも夜型で太陽の光を感じることが少なかったそう。だからこの家では、太陽と共に過ごすことをコンセプトにそのような形に。
「加えて、この家には壁に絵がない。僕らにとって絵はこの景色なんです。窓を額縁にして外の景色を絵に見立てているんですよ。だから窓の位置も景色がどう見えるかを意識して配置しています」
「ちなみに、日の出を感じたいからというのもそうですが、地球って東に向かってすごいスピードで自転しているんですよね。どうせならそのスピードに乗りたいので家は東向きなんです(笑)」
冬場は薪ストーブで暖をとる。キャンパーにとっても憧れの暮らしですね。
クラブ内にも随所にこだわりの小物が置かれています。いずれも旅先で拓磨さんが見つけてきたもの。
極めつけは自家菜園。取材日の前日はここで採れた野菜でグリーンカレーを作ったそう。その場でなっていたものを編集部もいただきましたが、無農薬の野菜はその場で何もつけずに食べてもしっかりとした味がし、みずみずしい。
さらには鶏も3羽飼われています。地球規模で自然を感じつつ、小さな自然も自分たちの手で直接感じ取ることできる暮らしは、ひとつの究極形ですね。
最後にこれからどんな方にCLUB3719を訪れてほしいかうかがいました。
「何せ長野の街のはずれですからね、今までの多くは口コミや感度の高い方が見つけて来てくださっていましたが、今後はもっと多くの方にここで自然体験をしてもらい、自然をリスペクトする気持ちを持ってほしいです。少年キャンプやヨガ、BBQにMTBと間口は非常に広いのでどんな方でもウェルカムですよ」
アウトドア好きはもちろん、興味はあるけどちょっと心配という方には間違いなく安心して自然体験を楽しめるCLUB3719。
街のはずれ、森の入り口で自然と遊び、向き合うひとときを作ってみてはいかがですか?きっとこれからの自身の暮らしのヒントが見つかるはずです。
住所:
長野県茅野市米沢3719
公式サイト:
http://club3719.com
facebookページ:
https://www.facebook.com/Club3719
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