まず、このSEA TO SUMMITを取り上げるうえで前置きしておきたいのは、ただ単に“順位を競うスポーツイベント”ではなく、“自然の循環に思いを巡らせ、自然の大切さについて考える環境型のスポーツイベント”であるということ。
SEA TO SUMMITは、各回100組もしくは300名限定という、スポーツイベントとしては比較的小規模で実施されています。たくさんの人を招いて開催すれば、高い話題性と利益を得られる側面がありますが、「大会を行ううえで危惧される“環境負荷”を第一に考え、少人数規模であっても、自然環境について関心の高い人たちに参加してもらうことが重要」なのだと、主催者であるモンベルの創設者・辰野勇会長が環境シンポジウムでお話をされていました。
海があり、山があり、里があり、それらの生態系が循環しているからこそ、わたしたちが恵みを受けて豊かに暮らしていけるということ。そんなことを深く考えさせられた「SEA TO SUMMIT 2016 in 佐渡」について、今回詳しくレポートしていきたいと思います!
2日間にわたって開催されるSEA TO SUMMITは、1日目に「開会式&環境シンポジウム」、2日目に「アクティビティー&閉会式」が行われ、参加者は両日参加をもってエントリーとなります。
環境シンポジウムでは、佐渡を拠点としている、太鼓を中心とした音楽芸能集団「鼓童」によるパフォーマンスにはじまり、自然循環について詳しく学ぶ講演や、「佐渡の自然環境を活かしたアウトドアの魅力について」のパネルディスカッションを実施。環境について“多角的”に知識を深められる、大変興味深い内容で行われました。
翌朝は、いよいよ佐渡の大自然の中へ。
まずはカヤックで5km海を漕ぎ、岸へ戻ったらロードバイクで25km走り、その後山を4.5km歩いて、佐渡島最高峰の金北山(標高1,172m)をめざす、全34.5kmの旅の幕開けです!
待ってました!佐渡の青い海!!
昨日はどんより曇り空だった天気も、今日は青空がチラリ。
沖に浮かぶブイをめざして、潮風を浴びながらグイグイ漕いでいきます。この感覚がめちゃくちゃ気持ちいい!
SEA TO SUMMITは、「ヨーイ、ドン!」で一斉にスタートするのではなく、チーム毎に配布される専用のICカードを機械に通してタイムを計測するシステムなので、時間差で順々に海へ入ります。いかにも“競争”といった空気にならない点も、このイベントならでは。
各々がそれぞれの視点で自然とふれあい、ゴールをめざしていくのです。
まずは見晴らしのいい海沿いを走りはじめ、
コースは徐々に山をめざして登り基調に。
ときおり、地元の方や観光客の方々から、「ガンバッテね~!」と暖かい声援が。折れかけたココロも一瞬にして復活していきます。
山の中に入れば入るほど、道は急こう配に。でも、1m、また1mと自力で標高を上げているので、植生の変化や気温の変化を感じ取れるのは楽しいポイントでもあります。
しかし、漕いでも漕いでも、道のりは遠し。ハイク地点まで、まだまだ残り13km…。
傾斜のキツいところは、蛇行を繰り返しながら、少しずつ。
でも途中で「もう無理~!」と挫折したり、
ときには車両トラブルがあったりしつつも、
山頂をめざして、どんどん標高をあげていきます。
するとその先で見えたものは…
佐渡の雄大な絶景・・・!!
見てください、この景色!頑張って漕いできてよかったと思える瞬間です。佐渡は海の色も、森も色も、澄んでいて本当にきれいですね…。
ここまでの激坂による疲れが一気にふっ飛ぶ瞬間!
と、ここまで順調に進んでいるようにみえたチームHYAKKEI。じつは、惜しくも残すところあと5kmのところで、ロードバイクの制限時間をオーバー。これ以上先には進めず、「完走」という目標を成し遂げることができないまま、幕を閉じる結果となってしまいました。本当に無念…!!
最初は、筆者の単なる“好奇心”から参加が実現したSEA TO SUMMITでした。でも、このイベントを通して、“自然の循環に思いを巡らせ、自然の大切さについて考える”といった視野を持てたことは、とても大きな収穫でした。
佐渡が育んだありのままの自然に、感動したり、ときに困惑もしたり。わたしたちの暮らしに恵みを与えてくれる「海」「里」「山」という舞台に、わたしたちが自ら身を置き対峙することは、本当に大きな意味をもっている気がしています。
今回は山頂へ立つことができませんでしたが、このSEA TO SUMMIT、ほかのエリアで必ずしもリベンジしたいと思います!
今年は開催場所が増え、11月まで全国各地で行われるSEA TO SUMMIT。カヤックやバイクをレンタルできる大会もなかにはあるので、興味を持った方はぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。きっと、新しい発見があなたを待っているはずです。
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写真/茂田羽生