グランピングは、一言でいうと「豪華なキャンプ」「贅沢なキャンプ」。
それくらいはだいぶ広く知られてきているように思います。
今年に入ってプレーヤーも増え、徐々にコモディティ化されてきているため、
様々な切り口でグランピングを楽しめるようになってきました。
豪華・贅沢なキャンプ、手ぶらでキャンプを体験出来る。
いわば、それは『グランピング1.0』。
自然体験のハードルを下げたりレジャーの1つとして広がりを見せていますが、ではそこで一体何が生まれるのか?というと少々疑問な部分がありました。ただ楽しければいい、豪華であればいいのか、と。
今回体験したEBISU PREMIUM GLAMPINGは、そこからさらに価値が加わったグランピングの可能性を広げる『グランピング2.0』とも呼んでいいものでした。
キーワードは、クロスオーバー。
あらゆるモノ・人・場所が領域を越えて交差する。
グランピングの価値を再定義してくれた本イベントのレポートをお届けします。
今回のグランピング体験の舞台になったのは、恵比寿ガーデンプレイス。そのど真ん中で、グランピング用に設えた店舗とショップが出現。主催はサッポロ不動産開発、企画は恵比寿新聞、監修は独特の世界観が話題のCIRCUS OUTDOORというコラボレーション。
誰もが気軽にテントに出入りができ、グランピングの快適さを実感出来るのが本イベントの特徴の一つ。ガーデンプレイスのど真ん中に位置していることもあり、人がひっきりなしに訪れていました。
このテントの内装を手掛けたのは、東京赤坂でヨーロッパ各地から仕入れたアンティーク家具を販売する『c:hord』。年末のCIRCUS OUTDOORのグランピングイベントで、最高クラスのテントを担当されていました。
この日は居住空間よりも、アイテム展示がメイン。グランピングで活躍しそうな味のあるアイテムが所狭しと並んでいました。
期間中は、サッポロビール本社の隣にある芝生スペースも特別な装いで開放。こちらにも2つのテントが用意。
こちらは、恵比寿に店舗を置く『ASPLUND』が手がけたテント。大型のソファを据えたすっきりとした内装は、軽く1週間は過ごせそうなイメージを持たせてくれます。このテントの内装は期間中3種類展開していたそうです!他の2つが見れず残念。
そしてもう1つのテントは、こちらも恵比寿ガーデンプレイスにも店を構えるギャッペ専門店の『CUCHE』。ギャッペとは、イラン遊牧民カシュガイ族がテントの中で使う手織りカーペット。由来もクオリティもグランピングにぴったり。
こちらは独創的な着物が魅力の『SUPER SEVEN』。夏フェスなどにも出店されているそうですが、快適空間のグランピングとの相性も良さそう。
こちらは帽子ブランドの『AURA』。「もっと世の中の人に帽子をかぶってほしい」という想いで、移動帽子屋やワークショップも行っているそう。グランピングでストローハット、良いですね。カジュアルさとフォーマルさを兼ね揃えたスタイルを楽しんで見ていはどうでしょうか?
恵比寿にも店舗を構え、ギフト用として人気の『wabist』。こちらの商品は天然の竹でできたペアグラス。竹なので驚くほどに軽く、作りもしっかりしています。おしゃれキャンパーは必見のアイテムですね。
編集部が注目したのは、この『すずがみ』。錫(すず)を何回も圧延することで丈夫になり、折り紙のように自由自在に折ったり曲げたりできるんだとか。キャンプ飯など、これにサーブして出されたらちょっと特別な気持ちになりますね。
普段は全く持ってアウトドアを意識した品揃えはしないお店でも、グランピングという切り口であれば交わることができる。モノの楽しみ方の可能性を広げてくれるのもグランピングの醍醐味の1つなのではないでしょうか。
本イベントの目玉は、なんといっても今注目のシェフによるプレミアムディナー。事前の申し込みの中から抽選で選ばれた数少ないお客さんだけが楽しめる、まさに特別な時間です。
徐々に日が落ち始め、ランタンに明かりが灯ります。
都会に出現した森のレストラン。準備万端のようです。
恵比寿の夜がいつもとはまた違った顔を見せ、プレミアムディナーのスタートです。
この日のシェフは、都内で話題の謎のBBQ会『ムト肉』の主、日本バーベキュー協会公認の武藤俊一シェフ。このムト肉を求めて、当選倍率は8倍という大人気ぶりだったそうです。
グランピングディナーでBBQということで、武藤さんに今回のディナーのコンセプトをうかがいました。
「今回はスマートBBQの基本スタイルで王道メニューをご用意しました。BBQは’コミュニケーションツール’、料理は主張しちゃいけないんです。グランピングということで空気を大事にしたかったのでこのような形にしました。選りすぐりの良い素材を自然に焼いて食べる。これがグランピングで提供できたらと思います」
「日本でよくある’奪い合うBBQ’ではなく、’シェアするBBQ’を。日本で昔からある、同じ釜のメシを食べる文化をBBQで表現したかったんです」
空気を大事に、シェアに重きを置いた考えはレイアウトにも表れています。会場の真ん中にグリルを用意しそこで調理。みんなが同じ場所に注目することで、その空間はひとつになり、体験をシェアすることになります。
そして、サーブはそれぞれのテーブルで武藤さんをはじめスタッフの方々によって行なわれます。
はじめは、赤の他人だったお客様同士もすぐに打ち解け合い、ディナーを楽しむ光景が。これも、敢えて席を近くすることでお客様同士が一体となる武藤さんの狙いがありました。
まさにBBQがコミュニケーションツールとなり、そこに居合わせた人たちが交差する時間・空間。会話を楽しみながら食事するお客様の笑顔が印象的でした。
ではこの日、どんなBBQ料理が振る舞われたのか。簡単にレポートしたいと思います。
エビスビールで中が蒸し焼きされた丸鶏は、外がカリッと中が柔らか。
ブラジル産の市場に出回っていないソーセージ。武藤さんがあらゆるソーセージを食べて、ここに行き着いたのだとか。日本にはない、豚肉と塩だけで作られたシンプルなソーセージをタスマニア産オーガニックのマスタードで。
野菜をそのまま丸ごと焼いて蒸しているため、種まで食べられる。そしてとても甘い。
サーブされた野菜には、豚肉のローストも添えられていました。しゃぶしゃぶのように軽く炙る程度で十分に美味しい良質な豚肉。
メインとなるムト肉。お肉丸ごとをグリルする光景はワイルドそのもの。
表面がしっかり焼かれた赤身、噛むごとに甘みがジュワッと感じられ冷めても柔らかい。さすがのムト肉。これを求めてたくさんの方が申し込みしたのも納得です。
最後のスイーツまでも、BBQスタイル。グリルで調理されることで甘さがより引き立っていました。
今回、グランピングの優雅な空間を演出するサウンドを2組のアーティストが担当。はじめに編集部もびっくりのDJ TAROさん。TAROさんといえばJ-WAVEのナビゲーターとして読者の皆さまも馴染み深いのではないでしょうか。第一線で活躍するTAROさんに今回のMIXのコンセプトをうかがいました。
「恵比寿というロケーション、そしてグランピング。外にいながら家の中にいるようにリラックスできるMIXにしました。特にここは様々な人々が交差する空間、JAZZでもBOSSAでもない、クロスオーバーの選曲です」
お気づきでしょうか?
冒頭でキーワードは「クロスオーバー」と掲げましたが、まさにTAROさんのお言葉を借りたもの。まさに今回のグランピングイベントを表現するのにベストマッチなワーディングです。
DJの合間はリラックスして、お客様たちとの会話を楽しんでいたTAROさん。自らばクロスオーバーを体現しこのグランピングイベントを楽しんでいる姿が印象的でした。
そしてもう一組が、音樹真輝さん。アコースティックギター1本で聴かせる音楽を披露。聴き心地の良いものを、と持ち曲を繋げてその場の空気に合わせて演奏したんだそうです。最後にはお客様も巻き込んだステージで会場はさらに一体感を増していました。
グランピングと言うと、人々のキャンプ体験のハードルを下げたり、レジャーとしてより豪華なものにすること。それ自体は素晴らしい取り組みであり、人々を外に、地方にどんどん足を運んでもらうことは非常に有意義なことです。
加えて、あるお客様がおっしゃっていたことがとても印象的でした。
「地方も課題は山積みだが、東京も課題がある。人々のつながりが薄くなってしまっていることだ。こうしたグランピングイベントで、希薄化した人とのつながりを生むきっかけができることは本当に素晴らしいこと。グランピングを都会でやる意義はここにあると思う」
通常のキャンプやアウトドアイベントは、どうしても同じ業界内の関係者が集まることが多い。それがグランピングという形であれば、一見アウトドアとは関係のないアパレル、ショップ、飲食、場所が有機的に参加することができる。
そこで領域を超えた交差が生まれることで、人とのつながりが出来上がる。
アウトドアの魅力は自然を楽しむことはもちろん、そうした人とのつながりや一体感を楽しむきっかけにもなることだと、ギアやモノ・景色に注目が集まりがちなアウトドアですが、精神的な豊かさも得ることができる。改めてそんなことを認識したイベントでした。
クロスオーバー。
グランピングがもたらす新たな可能性に、期待はやみません。
文:.HYAKKEI編集部 /写真:黒木武浩(黒木写真事務所)