WOLRDTRAILSは海外のトレイルルートのトレイル記を残していくことで日本から海外に歩く人が1人でも増えたらいいなと思い始まった連載企画。今回は芦塚勇樹さんが2024年の7月に歩いたフランス、イタリア、スイスの国境を歩いて通過する「TMB(Tour du Mont Blanc)」のトレイル記をご紹介します。
トゥール・デュ・モンブラン(TMB)は、ヨーロッパで最も人気のある長距離トレイルコースの1つ。モンブラン山塊を周回し、10の峠をスイス、イタリア、フランスの一部を通過しながら、約165キロメートル(103マイル)を歩きます。この周回ルートは通常、9~14日間で反時計回りですが、エスケープルートも多く、公共交通機関を使って、景色が良い場所のみを歩くことや数回に分けて歩くことも可能です。
世界的なトレラン大会であるウルトラトレイル・デュ・モンブランのルートでもあり、大会では46時間30分の制限時間で一度に全距離を走ることになります。今回、そのコースを歩いたため、いつか挑戦したい大会になりました。
今回のトレイルの行程はこちら。なお、昨年歩いたモンブランとマッターホルンを繋ぐ山岳ロングトレイルの「 The Walkerʼs Haute Route」のルートと重なっている区間であるChampex~Aregentiereは、省略しました。
【後編】ヨーロッパのロングトレイル「オートルート(The Walkerʼs Haute Route)」を歩いて – .HYAKKEI[ドットヒャッケイ]
期間:2024年7月14日(日)~21日(日)
累計距離:155km
累計高低差:上昇8,780m、下降8,650m
1日目:シャモニー(Camping les Arolles) – Camping du Pontet
2日目:Camping du Pontet – La Ville des Glaciers付近
3日目:La Ville des Glaciers付近 – Campeggio Aiguille-Noire
4日目:Campeggio Aiguille-Noire – Camping des Glaciers
5日目:Camping des Glaciers – Champex , その後、Orslers – Argentiere まで電車移動し、Camping du Glacier D’Argentiereへ。
6日目:Camping du Glacier D’Argentiere – Les Houches
初日は、ただひたすらに歩いた日でした。シャモニーを出発し、TMBのスタート看板があるLes Houchesに辿り着きます。
ここからいよいよTMBのスタート。実は、この3日前にイタリアドロミテの約125Kmのトレイルをフィニッシュしたばかりであり、体力が最後まで持つか少し不安を抱えながらスタートしました。なお、ここでカナダから来たハイカー2人と知り合いとなり、その後ゴールまで進捗を報告し合う関係となりました。これぞトレイルの醍醐味です。
しかし、スタートからまもなく、炎天下の中、いきなりサングラスを紛失。途中のスポーツ用品店で購入することに。そして、絶景が見られビバーク可能なRefuge du Col de la Croix du Bonhommeを目指すも、夕方から雨予報であったため断念。途中のキャンプ場での宿泊に変更しました。ここには続々とTMBハイカーが集まってきます。予報通り、夕方からは大雨となり胸をなでおろしました。
朝から、前日からの激しい雨が続く。テント以外はザックに収納したものの、なかなか雨は止みません。ようやく小雨になった朝8時過ぎに行動開始。川も濁流になっています。歩き続けると少しずつ晴れてきました。すると、登山道真横でも爆睡中の羊たち。前日の大雨で眠れなかったのかな。
美しい景色を眺めながら進み、Refuge du Col de la Croix du Bonhommeに辿り着くと、ちょうど救助のヘリが到着。脚を痛めたハイカーが救助されていました。現地で救助されると高額なレスキュー費用が発生する場合もあるため、事前に適切な海外旅行保険に加入しておきましょう。なお、この地点で夕焼け、朝焼けの絶景を写真に撮るためにビバークするか葛藤しましたが、距離を稼ぐために先に進みます。その後の下りは急な雪斜面であり、念の為、チェーンスパイクを付けて慎重に下りました。しかし、何名かは滑って転けていました。そして、ビバーク地点に辿り着きます。ここでもその後、何度も顔を合わせることになる2組のハイカーと知り合いになりました。
気持ちの良い朝を迎え、行動開始。Col de la Seigneでは、歩いてフランスからイタリアへの国境越えとなります。ボンジュールからチャオへ挨拶も変わります。
ここからは気持ちの良いトレイル。山小屋では美味しいカプチーノやスイーツを味わいつつ、数々のヨーロッパアルプスの名峰や氷河を見ながら進み、ようやくキャンプ場へ。シャワーが気持ちよい。ここで前日に知り合った1組のハイカーと再会。ワイン、ビールに友人となったハイカーの出身であるモルドバ共和国のお酒をごちそうになり、チーズを摘みながら、嗜みます。言語や国、性別、世代、職業が異なっても、目的が同じであるため、自然と話が弾み、ハイカー同士の交流が広がっていき、遅くまで話が弾む。これぞTMBと言う感じで非常に充実した時間となる。しかし、この代償は翌日に。。。
前日の深酒により、当然ながら早朝に起きられるはずもなく、遅めの朝9時スタートになりました。
Courmayeurの街を過ぎ、急登を超えると、Mont BrancやGrand jorassesといった名峰を眺めながら
歩けるビクトリーロード。行けるとことまで行こうと、峠を何度もクリアし、Grand Col Ferreに差し掛かります。ここは絶景でマーモットの棲家もあり、ビバークするか迷うもGrand Col Ferreを超えてイタリアからスイスへ入国しましたが。この時点で夜の7時半。キャンプ場までは9km、コースタイムは2時間45分ですので、歩いては間に合いません。キャンプ場は基本的に夜9時までの受付のため、走ってキャンプ場へ向かうことを選択し、何名ものハイカーを追い越し、ギリギリ到着しました。通常2日は掛かる約40㎞を1日で歩いたことにより、設定期間内でのTMBのゴールが見えて来ました。
この日は主に降りと平坦な道のりのため、前日の疲れを取るためにゆっくり休んで、10時前にスタートしました。距離はあるが、難なくWalker’s Haute Routeとの合流地点のChampex-Lacに辿り着き、湖で何度も顔を合わせているハイカーと再会し、談笑後に、Orslers駅へ向かいます。Champex~Argentiere間は、昨年歩いているためスキップしましたが、ChampexからOrslers駅まではWalker’s Haute Routeのルートでもあるため、懐かしさを覚えながら、歩いてました。
【後編】ヨーロッパのロングトレイル「オートルート(The Walkerʼs Haute Route)」を歩いて – .HYAKKEI[ドットヒャッケイ]
そして、電車を乗り継ぎ、約2時間、昨年も泊まったCamping du Glacier D’Argentiereに辿り着きます。その後、天気も少し崩れ、小雨後に曇りとなりました。なお、連泊のために2日分の宿泊手続きを実施しました。
最終日。ゴールであるLes Houchesにはキャンプ場があるものの、山で宿泊しないのにフル装備で登るのが嫌で、連泊し、ゴール後にこのキャンプ場へ戻ってくることを選択しました。そのため、テントを張りっぱなしで日帰り装備でアタック。一部のルートは去年も歩いていましたが、終始モンブランを眺められる絶景トレイルルートであったため、それを楽しみに、美しいモンブラン山群や湖を眺めながら進みます。上空にはパラグライダーも気持ちよさそうに飛んでいます。 なお、この時通過したシェズリー湖(Lac des Chéserys)は、去年、Walker’s Haute Routeの初日にテント泊した場所で、持参した一眼レフカメラが壊れ、泣いた場所。この日は今年のトレイルの最終日であり、最後までカメラが壊れなかったことにも喜びを感じてました。
そしていよいよ最後。急な下りのロングで調子に乗って走ってしまい、このTMBとその直前に歩いたイタリアドロミテの2つのトレイルの疲れが一気に来て、最後のコンクリートロードでは前に足を動かすのが精一杯になってしまいましたが、無事にゴール。昨年と併せると、TMBをすべて自身の脚で歩いたことになり、喜びが満ち溢れてきました。なお、ゴールしたハイカーのほとんどがLes Houchesのキャンプ場に向かい、一緒に祝杯をあげようと誘われるものの、私はCamping du Glacier D’Argentiereに荷物を置いてきていたため、少し寂しさを感じながら、電車で前泊地に戻りました(次も歩くとしたら、ゴールに近い場所で宿泊すると心に決めました)。
ヨーロッパで最もメジャーなルートです。緑や黄色のTMBマークが至る所にあり、ルートも明快です。道標を見落とさなければ、地図やGPSが無くても歩けるでしょう。道標が無ければ、道を間違えている可能性があるため、その都度、地図やGPSでの確認が必要となります。
日本には生息していない動植物に会えます。マーモットやアイベックス、シャモア、牛、羊などの他、固有の植物も。また、犬を連れて、ハイクしている人もよく見かけました。
ルート上及び周囲には一定間隔でキャンプ場があるため、テント泊の場合はそれを利用するのが基本になるでしょう。しかし、山小屋付近でのビバークは絶景が約束されていますのでぜひ利用してみてください。なお、山小屋付近でビバーク可能な場所と不可の場所があるので注意が必要です。下記2サイトは参考になります。
https://www.montourdumontblanc.com/fr/index.aspx
実際のTMBのルート上に表示されており公式情報に近い印象
https://www.chamoniarde.com/montagne/refuges
山小屋、ビバーク可能な山小屋をルート毎(TMB、WHR等)に検索可能。
ビバークに関する基本的には考え方としては、日の入り~日の出頃の間にテントを張る、形跡を残さないことを前提に許可するといったものです。さらに、イタリアでは高さ2,500m以上であることなど、国・場所によってルールが異なるため、下記サイトを参照してください。
https://www.thehiking.club/tour-du-mont-blanc
https://www.chamoniarde.com/vos-activites/tour-du-mont-blanc
実際には日の入り~日の出頃の間にテントを張ることを前提に、形跡を残さないことを前提にビバークしている人を見かけます。今回、唯一、ビバークしたLa Ville des Glaciers付近の駐車場はトイレがあり、複数のハイカーがビバークしていました。また、すぐそばに酪農工場があり、新鮮なチーズやヨーグルトが安価で購入できます。これがおいしくて、お薦めです。
ハイカーは予約不要。シャワー、トイレ(中国式、洋式)、洗濯機、ゴミ捨て場あり。コンセント、Wi-Fiも利用できます。場所によってはATMもあります。飲み物、軽食、朝のブレッドなども購入できる他、レストラン、Barが併設されている場所もあり、ハイカーの交流もできます。ただし、込み合う週末などは、キャンプ場入り口にCOMPLET FULL(仏語、満杯の意味)と掲げられている場合もあります。車乗り入れではなく、ハイカーであれば受け入れてくれますが、限度もあると思いますので、早めの到着が良いでしょう。
ヨーロッパの山小屋は設備や提供される食事も日本の山小屋とは根本的に異なります。清潔で、トイレも綺麗。シャワーも完備されています。もちろんコンセントもあり、通過者も使えます。また、場所によってはWi-Fiも利用可能です。
TMBでは山小屋宿泊はしませんでしたが、ランチやスィーツを楽しみました。山小屋は景観の良い場所に建てられており、美味しいご飯も味わえるため、宿泊もお勧めです。なお、山小屋の雰囲気はイタリアドロミテと変わりませんので、こちらの記事も参考になります。
ちなみに、Refugio Elisabettaのオーナーは陽気でダンディーなイタリアのオジ様で、日本が好きで京都を訪問したことがあるとのこと。
山小屋、キャンプ場、街、水場が一定間隔であるため、水の入手で困る事はありません。一部の山小屋では、ミネラルウォーター購入になります。
途中で雪渓、沢、川、湖などがありますが、浄水器による濾過が望ましいです。そのまま飲めない水場については、飲用不可の記載があります。”Eau Water”は、飲用可の意味ですが、表示のない水場もあり、それをそのまま飲むかは自己判断になります。
モンブランの麓の街(Chamonix)は、登山やスキーなどのアウトドアの拠点でもあり、スーパー、スポーツ用品店などが多数あります。ここやChamonix付近のキャンプ場で買えるモンブランビールは絶品であり、ぜひ試して欲しいです。ルート上の街でも買い物は可能で、Le Baptieu、Champex、CourmayeurやLa Foulyにはスーパーやレストランがあります。
モンブラン麓の街(Chamonix)にはスポーツ用品店が多数あり、ガス缶も購入できます。ルート上の街であるCourmayeurやLa Fouly、Champexにも、スポーツ用品店があります。ガス缶は、キャンピングサイト(Camping du Pontet)でも売ってる場合がありました。
今回のトレイルで持参した装備やギアについては別記事でまとめさせていただきました。
加えて、使用感の良かったもののレビューも記載しておりますので、参考になりましたら幸いです。
この旅では、下記のブランド様が物品提供という形でご協力いただきました。
快くご協力くださり誠にありがとうございました。
POLARTECは、高性能な合成繊維素材を提供する素材メーカ。アウトドアウェアに使用される高品質フリースをはじめとした。保温性、軽量性、速乾性を兼ね揃えた機能性素材を提供している。近年は、環境に優しいリサイクル素材や天然素材も使用している。
Rab(ラブ)1981年、イギリスでロバート・キャリントンが自宅の屋根裏部屋にて2台のミシンを使って高製品で機能的なダウンや寝袋を作り始めたのがブランドのスタート。世界中の極寒環境やアルパイン登山に特化したハイクオリティーなウェアとスリーピングバッグを主力アイテムに展開。
Outdoor Researchは、1981年にロン・グレッグによって設立された、アウトドア用の技術的なアパレルとギアを製造するアメリカの企業です。本社はワシントン州シアトルにあります。この会社は、アルピニズム、ロッククライミング、バックパッキング、パドリング、バックカントリースキーおよびスノーボードなど、多岐にわたるアウトドアスポーツ用品を提供しています (Outdoor Research)。
ソックスなのに生涯保障。
メリノウールの心地よい履き心地と、耐久性を実現させ、なんとソックスなのに生涯保障を謳った、ウールソックスブランドです。アメリカ、バーモント州ノースフィールドにあるMills(紡績工場)でデザイン、テスト、生産、出荷までを一貫して行っています。
2011年米国・マサチューセッツ州にて誕生したリカバリーシューズブランド。 熟練の靴職人・一流のアスリート選手やトレーナーから構成される、ベテランの開発チームが一丸となって約2.5年の歳月をかけ完成させたのが全く新しいリカバリーサンダル。
カルフォルニア、イースタンシエラを拠点に、家族経営でアウトドアを楽しむためのメリノウェアを提供しているブランド。
トレイルランニングやランニングの持つ魅力を伝え、“機能とデザイン”をコンセプトとするオリジナリティのあるギアやウェアで「アクティビティのある生活の楽しさ」を提案するブランド。
革新的なデザインと、機能性が高いウェアやザックを生み出す、トレイルランニング専門ブランド。
道具を通して、より深くハイキングを知る。ハイキングを通じて感じた、本当に必要な道具を形にしていく山道具のメイカー。
CHAORAS チャオラス スポーツてぬぐい 松葉は、登山、トレッキング、トレイル、ランニング、などアウトドアアクティビティにおすすめのてぬぐいです。
アウトドアで使いやすい機能性を採用し、自然に馴染むようなバランスを考えてデザインしました。生地を織ること、縫製、染め、パッケージングまで、全て日本の職人さんの手でつくった日本製です。
アメリカの鳥獣保護団体、AUDUBON(オーデュボン)のバードコールです。
金属と木製部分の摩擦により、鳥のさえずりを再現する道具です。100年以上前からアメリカで使われおり、森の中で野鳥を呼び寄せたり、会話することができます。
ヨーロッパアルプス最高峰のモンブラン。それを有する山群を眺めながら一周する絶景の連続のルートです。また、フランス、イタリア、スイスと歩いて国境を越えることもできます。メジャーなルートであり、世界各国から集まるハイカーが同じ目標に向かって歩くため、自然とハイカー同士の交流も深まります。人が多くにぎやかですが、山小屋はもちろん、通過する街も多く、エスケープルートや豊富で、公共交通機関でのスキップも可能であるため、海外トレイルが初めての方も安心して歩けるルートだと思います。
日本とは異なる景色が広がっている、ヨーロッパアルプス。その一部でも味わってみませんか? 感動を味わいに、ぜひ訪れてみてください。きっとあなたの人生に大きな影響を与えるトレイルになるでしょう。
なお、インスタグラムでも様々な写真を紹介しております。もし本トレイルに興味があれば、ご連絡いただければ、相談や情報提供もできますので、お気軽にお問い合わせください。
https://www.instagram.com/yuki_a73_mountain/