野外に出るとき、きっとカメラと一緒に出掛けることがほとんどでしょう。今や多くの方が気軽なミラーレスから本格派のフルサイズの一眼レフで、たくさんの光景を記録されていると思います。
日中は撮るものがたくさん。けれど夜になると出番が急に少なくなるかもしれません。
オーバーナイトなアウトドア旅だからこそ、夜にカメラを使ってみませんか?被写体は夜にしか会えない星たちやその風景。自分の眼で見えるものと違うものを、あなたの”相棒”が見せてくれますよ。
星空準案内人である私(SAM)も今一番楽しいアウトドアの時間は星空の撮影。難しい技術はさておき、「この光景を閉じ込めたい!」そんな気持ちで気楽にシャッターを押しています。
上の写真はあるキャンプ場で気軽なタイプのミラーレス機を使い、三脚を立てて撮ったものです。
実をいうとほぼオートの設定。マニュアル設定ではありません。
なので、無限のピントでもなく、結構手前にピントがあったり、露出もキャンプサイトが完全にオーバーではありますけれど、それも偶然の産物としていいんじゃないかと思います。むしろ、意図しない光景をカメラが作り出してくれた、そんな感じです。
ちなみに一つだけ操作をしたのはホワイトバランスをAUTOから「電球」モードにしたことです。こうすると全体がブルーになって、雰囲気ががらりと変わって楽しいですね。夜の写真を撮るときにどうしてもハードルになってしまうのは、写真撮影のさまざまな技術。
ピント、露出、構図……。でもそう心配しなくてもいいと思いますよ。「いい写真を撮らなければ!」と躍起になると苦労しますけれど、「その場の記録を残そう」と思って失敗も成功も考えないことが大切。今の一眼の持つ性能ならば、ちょっとだけがんばることで十分にいいものが撮れるはずです。
まずはカメラを外に持ち出し、シャッターを切ってみましょう。
季節により星空は変わります。どのタイミングで撮るかもポイント。なので、一等星の多い星空そのもの、またはそれを背景にすれば撮りやすくなります。
例えば誰でも知っているオリオン座。形も分かりやすく大きいし、一等星が二つもある派手な星座。隣にはこれまた派手なおおいぬ座のシリウスがあって、こいぬ座のプロキオンとともに、いわゆる「冬の大三角」を形成しています。夏から秋にかけてなら夏の大三角を形成する織姫星(ベガ)と彦星(アルタイル)、どちらも一等星で、映りやすい星の代表格。
また、誰にでもなじみがあり、季節を問わず星空にいてくれる北斗七星もいい被写体です。光が少ない、やや暗い星々をたくさん写そうとすると、レンズの性能はもちろん、カメラの設定を含めたいろいろな技術を必要とされます。しかし、まずは気軽に撮ろうとするなら、明るい星のある時にほぼカメラ任せに撮ってみるのもいいと思います。
真ん中にあるのは木星。星座と違って規則性のつかみにくい惑星も、偶然そこにあれば明るく写しやすい星です。
ではこの写真を、カメラに備わっていたり、スマホアプリなどで利用できるデジタル系フィルターで加工してみましょう。
まずはソフトフィルター。星の数は減ってしまったものの、すっかり夜の優しい世界に変わりました。実際は夜中の12時過ぎに撮っているのに、ソフトにするとまだ8時くらいの雰囲気になったりするので不思議です。
こちらはモノクロフィルター。ガラリと印象が変わりますよね。一転してハードな雰囲気です。結果色彩が強調されなくなった分、木星が際立ってくるという効果があります。
これらの操作・加工で、独自の世界観を撮影後にゆっくり楽しめるのはデジタルの特権。しかもそんなに難関ではなく、気軽にできますし。
多少撮影時に思うようにいかなかったとしても、こういうフィルターの活用することで、カットが急に息を吹き返すこともありますから、積極的に使ってみるのは大いにアリだと思います。
「星の写真」というと、ついつい別物に扱われる月。お月さまだって立派な? 天体のお星さまです。
ただ、月が明るければ明るいほど他の星々が見えなくなってしまうので、両者の魅力はなかなか両立しないというのも事実。しかし、そんな明るいお月さまの日は、割り切ってガッツリ月そのものを被写体にしてしまいましょう。
初めてデジタル一眼を購入するとき、ついセットレンズとして望遠レンズ付きを選んでしまいますよね。ところが実際にカメラを手にして以降はまるで出番なし、ということはありませんか? 昼間で活躍するのも、せめてお子さんがいれば運動会の時くらい。
いやいや、ここはその眠っている望遠レンズを引っ張り出して、ぜひお月さまを撮ってください!
望遠で映し出された月は、肉眼で見る以上の迫力ある表情をみせてくれます。上の写真は特別なレンズではなく、標準セットの望遠レンズで写したものをトリミングしたものです。一応それだけでは物足りなかったので、前述したホワイトバランスを電球モードにして「ブルームーン」的にしてみました。
満月のみならず、上弦・下弦の月、そしてバナナムーンの撮影も楽しいですよ。
お月さまについても、アート系のフィルターで雰囲気を変えてみるのも、これまた面白いです。雲があったら一番いいアクセント。多少ノイズが強調されたりしますが、そんなこと気にしない、気にしない。
星の写真を極める、というならまったく別として、とても気軽な「星空スナップ」という概念があってもいいのではないでしょうか。
あまり身構えず、その時にレンズが拾ってくれている光景を素早く取り込んでしまう。無数の星を写していれば後で気が付く何かがあったりして、へー!そうだったのか!と、つい発見に喜んでしまうこともあります。
上記の写真、左下の方に小さな渦巻きがあるのがわかります?
これは「アンドロメダ銀河」。全く意図して写したわけでもなく、北西の方を向けてシャッターを押したら、そこにいてくれました。
地球から250万光年彼方の1兆個の星々の集まりが、偶然にもそこにある! 考えてみたらすごくないですか! 1枚のスナップ写真の中にそんな広大な宇宙があるなんて。
星空を見上げながら写した偶然の産物は、結果全て「あなたとカメラだけの世界」です。それを見ているのはあなたとカメラだけ。周りに誰もいず、あなたとカメラの「二人」だけ。そしてカメラとあなたは違うものを見ている。
写された写真を見て、カメラともう一度対話をする。星空の撮影にはそんな楽しみもあります。まずは、三脚を立ててシャッターを切ってみてください。アウトドアの夜の新しい世界がそこに広がるかもしれません。