みなさん、こんにちは。オートパッカーのイナガキです。
いよいよ春の足音が近づいてきました。冬季閉鎖していた人気のオートキャンプ場も営業を再開し、既にゴールデンウィークの予約が始まっているところもあるようです。
そこで今回は、これからオートキャンプを始めたいとお考えの皆様に向けて、サイトで大事なリビングを守る、「タープ」と「シェルター」のお話をしていきます。
毎日が晴天無風であれば、タープもシェルターも使わず、誰でも木陰にイスとテーブルを広げてのんびり寛ぐことができます。
この写真もそうですが、雑誌やウェブで見るキャンプシーンは、「そういう日」を選んで撮影しますし、何より誰もが、気持ちが和む穏やかな休日のキャンプを夢見て、各地のフィールドへと出かけていくわけです。
しかし、昔から日本は「3日に一度は雨が降る国」といわれています。
もちろん地域格差はありますが、3連休なら1日は雨に当たる公算が高いというのは、わたしの経験上からも頷ける話です。
また雨は終日降るとは限りません。最近はゲリラ豪雨のように短時間に多量の雨が降ることも多く、常に「雨」を避けてキャンプをするというのは、実際には「不可能なこと」といえるでしょう。
もうひとつの敵は「風」です。
キャンプサイトがある海辺や湖畔は朝夕に風が吹くことが多く、また山間部にある河川敷は「風の通り道」にあたる場合がほとんどです。その時間帯とキャンプの設営が重なれば、無風ならなんでもないことが難儀になります。
その典型的な例がタープの設営でしょう。風を孕んだタープを張るのはベテランでも大変で、無理をしようとすればポールが折れたり、怪我をすることも少なくはありません。
今はどこの高規格オートキャンプに行っても、このような「テントと一体型になったシェルター」が並んでいます。中にはそれが気になり、ティピーを選んでいる人もあるようですが、わたしがキャンプを始めた1990年代には、こういうスタイルは「皆無」に等しい状況でした。
つまりこれは、
20年の歳月をかけて、我国のキャンプ用品メーカーが構築してきた「日本独自のキャンプスタイル」
という見方もできるわけです。
シェルターは、寒ければフライシートを締めて冷気を遮断し、暑ければメッシュにして中に風を通すだけでなく、雨も虫もシャットアウトしてくれるスグレモノです。
わたしはここ数年北海道をリアル・オートキャンプで旅していますが、自然が色濃く残る北の大地に行けば、そのありがたみが身に染みてよくわかります。
ただ、テントとシェルターが一体であるほうが良いかどうかは別問題です。
確かにカラーが統一されるとビジュアル面では美しいですが、使用頻度の高いシェルターはファスナーなどが傷みやすく、現在のように短期サイクルで商品がリニューアルされる時代に、買い替え時にも同じ品番があるかどうかは疑問です。
そう考えると、テントとセットでの使いやすさよりも、シェルター単体でのクオリティーを優先するほうが安心でしょう。またそうしておけば、写真のように「車中泊」でオートキャンプを楽しむ際にも無駄になることはありません。
今度はタープのお話です。
これまでの文脈からすれば、「タープはいらない」と言っているように思われるかもしれませんが、この記事のテーマが「『日本の自然』とシンクロするキャンプ。ジャストフィットするのは、タープ? or シェルター?」であったことを思い出してください。
タープにはシェルターにはない「開放感」という魅力があります。それを楽しむために、わたしは初夏と秋の盛りに「期間限定」で使用しています。
ただし、見た目の華やかさとは別に、時間帯で日陰は移動し、夜に突風が吹いて倒壊したり、テンションが緩ければ雨が貯まって倒壊するなど、シェルターに比べると、その扱いは比較にならないほどデリケートで、初心者なら気疲れしてしまうかもしれません。
数時間しか使用しないデイキャンプではなく、フルキャンプでタープを使いこなすというのは、ただ「カッコ良く張れる」だけではなく、先ほど列記したようなリスクに対処する、総合的なキャンプ技術を発揮するということです。
最近のキャンプは、昔ながらのアウトドアというよりは、公園BBQに近いレジャー感覚で楽しまれている人が多いように感じますが、天候が悪くなってきたからといって、そそくさと片付けて帰れるほど少ない荷物ではないと思います。
簡単そうに見えるキャンプにも「基本」はあります。
それを無視すれば「無理」が生じ、結局は高いお金を出して揃えたキャンピングギアが無駄になるかもしれません。サイトのカッコ良さやドレスアップを考える前に、まずは基本となる日本の気候風土とキャンピングギアのことを知りましょう。それには、きちんとしたアウトドアショップで、一度しっかり接客を受けるのがいちばんです。