【自然ビト01 】ワークライフミックスとしてのアウトドア/.HYAKKEIライター松田然

アウトドアを楽しむことになったきっかけは人それぞれ、多種多様です。
そしてその楽しみ方も広がりを見せています。
皆さんはどんなアウトドアライフを送り、自然を楽しみたいと思っていますか?

自然を楽しんで生活している方たちに焦点を当て、そのきっかけや楽しみ方を探るインタビュー企画『自然ビト』。第1回は.HYAKKEIオープン以来、記事を書き続けて頂いているライターの松田然(もゆる)さんです。
松田さんの語る『ワークライフミックスとしてのアウトドア』とはどんなものなのでしょうか?

■松田然さんプロフィール
ライティングカンパニー合同会社スゴモン代表 兼 ライター。旅をしながら仕事をするワークスタイルを取り入れ(TravelWorker)、自転車で日本の47都道府県を走破。
起業・フリーランス・上場企業・ベンチャー・海外と様々な働き方も経験し、自分らしいライフスタイルのヒントを発信中。

自然を楽しむルーツはその名にもある通り、幼少期まで遡る

—本日はよろしくお願いします。
松田さんのことですごく印象に残っていることがありまして。.HYAKKEIを立ち上げるとなり、急ピッチでライターを探している時に「自転車で日本一周をした松田然という方が、今ちょうど北海道を旅していますよ」という紹介を受け、「これはもう.HYAKKEIにぴったり過ぎる!」と思ったのを強く覚えています。

松田さん(以下松田):ありがとうございます(笑)

—「然(もゆる)」という名前からして、自然を楽しむことは必然、運命だったのではないかと思っているんですが、今こうしてアウトドアを楽しむことになったきっかけって何だったんでしょうか?

松田:今思えば、父が物理の先生で化石とか星が好きだったんです。それで車を走らせて観光スポットではないような山に化石を探しに行ったり星を眺めに山奥まで連れていったりしてくれたんですね。父と一緒に草木をかき分けて山を進んだりとか……幼少期の思い出というとそういうのが頭に残っているんです。
そんな父を小学生の時に早くして亡くしたのですが、かなり鮮明に当時のことは覚えていますね。「然(もゆる)」という名前も、そんな父の想いがあったんだと思っています。

—幼少期からの体験が今のベースとなっているんですね。松田さんは自転車と行動を共にしていることが多いと思いますが、それも小さい頃から?>/b>

松田:はい、小さい頃から自転車には乗っていて、なんか小さい頃って自転車に乗ってどこへでも行けちゃう気がするじゃないですか、冒険心が騒ぐというか(笑)だからどこか行きたいところとかがあれば、自転車をこいで飛び回っていましたね。

転機は、震災後の価値観のシフト

松田:でもこうやって大人になっても自然を楽しむようになっているのは、「価値観のシフト」が大きいんです。

—価値観のシフト、と言うと?

松田:社会人になってから20代・30代前半は自然にはほとんど触れてなかったんですね。とにかく仕事が大好きで、仕事優先に生きてきていて、月曜日から金曜日まで会社に寝泊まりして仕事をしていた時期もありました。

それが、震災を機に「自分の人生において何を大事にしていくか」ということを改めて考えるようになったんですね。もちろん仕事も好きだったんですが、それだけじゃないなと。それで思い出したのが子供の頃から好きだった旅、中でも自転車旅。その好きだったことが全然できてないな〜って思うようになって。

『仕事 or 旅』から『仕事×旅』というシフト

松田:そこで、当時の上司に、「仕事を1か月休んで旅に出て良いですか?」ではなく、「仕事しながら1か月旅に出て良いですか?」と相談をしたんです。それで東京から北海道の最北端・宗谷岬まで自転車旅をしながらライティングの仕事をしたり、ご当地のお土産のECサイトを立ち上げたりしました。そんな形でやっていたら、けっこうこの「旅×仕事」のスタイルはイケルなという感触があったんですよね。

—仕事、自転車旅。好きなことをどちらもやるスタイルですね、面白い!

松田:東京に戻ってきてからもそういうライフスタイルに興味を持つメディアさんに取材されて、そのメディアさんともライティングの案件でお取引するようになったりして。その時に「価値観をちょっとシフトするだけでできるじゃん」って思ったんです。

周りからは「すごいね!」って言われますけど、本人はただ好奇心の赴くままで行動していてストレスなく過ごせてるんですね。そう思うようになったのが今から3年半くらい前でしょうか。それが大きなターニングポイントになり、昨年、自転車で47都道府県を回り終え、その間も仕事をするスタイルを確立していきました。

自分と向き合い、自然の中にいた幼少期を思い出す

−そうやって旅をしていく中で、自然を楽しむことに繋がっていったんですか?

松田:仲間とする旅も好きなんですが、私はけっこう1人旅が好きで。1人旅って自分と向き合ってばっかりなんですよね。それがすごい大事な時間だなって思っています。

たとえば自転車で峠を登ろうとするとすごく大変なんですが、他人から言われたことだったら「なんだよこれ」ってなりますけど、一人旅で自分で登るって決めたことなんで、「なんでこんなことしようと思ったんだっけ」とか、自分に問いかける内省の時間になるんです。そうする中で、幼少期での体験が思い出されて。自転車旅が好きですが、根っこは自然が好きなんだなって。

特にそれを感じたのが、鳥取砂丘で沈む夕日をボーッと待っていた時で。父が自然を遊び場として色々連れて行ってくれたり見せてくれたことを思い出して。

自然を楽しむことにおける、3つの魅力

1.受け身じゃない、主体的な『自立』

—過去の自然との向き合いが、大人になって自省を繰り返す中で思い出されたんですね。幼少期の記憶以外に、今大人になっても自然を楽しもうと思える理由というのはあるんでしょうか?

松田:大きくは3つあるかなって思っています。1つ目は「自立」です。
誰しも子供から心も体も成長して大人になるわけですが、それで自立した大人になったわけじゃないと思っているんです。順番としては、「受け身の子供」→「受け身の大人」→「自立した子供」→「自立した大人」、これだと考えています。
松田:松田:自然に帰ると童心に戻れることってあるじゃないですか。1度大人であることをリセットする。でも子供のままでは観光地は楽しめますが、本当の自然に向き合うには自立した大人にならないと難しい。だから再生してるっていうか、自然に触れ合って童心に戻り、そこから本当に自立した大人になっていく、そういうものとして自然を捉えてます。

自然に触れ合うって、主体的にならないとできないじゃないですか。特に都会にいる人たちは時間をかけて移動しないといけないし、他に楽しいこともあるし。それなのに自然に触れ合いに行くって、かなり自立した大人でないと楽しめないんじゃないかって。自分の周りのアウトドア好きな人って、かっこいい大人が多いんですよね。自分でリスクを考えて行動したり、自分で何か作ったり。誰かが与えてくれるものって思ってない。

—そういう考えっていつ頃できたんですか?

松田:仕事をしてれば誰でも自立しているって意味じゃないですよね。僕にとってはやはり旅に出たことが主体的であり自立の始まりだったと思っています。そこからでしょうか。

2.仕事のパフォーマンスを上げるための『リフレッシュ』

—受け身ではなく、自分の意志で決めて行動をしたのがきっかけだったということですね。2つ目は?

松田2つ目は「リフレッシュ」です。
これは仕事のためのリフレッシュで、よく言われるオフのリフレッシュではないんです。よくSNSなどでアウトドアを楽しんでいる様子をアップする方もいると思いますが、語弊を怖れず言えば、そういった人の中には日々のストレスの発散のためのアウトドアだったりするじゃないですか。私はそうではなく、仕事のパフォーマンスをもっと上げるためのリフレッシュなんですね。たとえば企画を考える時とかもオフィスの閉ざされた空間ではなく、自然の中で考えることで生まれることがあります。

−オフではなく、オンの一環、というイメージでしょうか?

松田:そうですね。私はワークライフバランスという考え方にちょっと違和感があって、あれは根底にはワークが大変だからライフを良くしてバランス取りましょうっていうのがあると思うんですね。そうじゃなくてワークライフミックスなんです。

−それすごく分かります。分けて考えるのではなく、どちらも活きる形であれば人生自体がとても有意義なものになりますよね。そういった意味で私もこの仕事で非常に良い経験をさせてもらっていると思っています。

3.さまざまな『出会い』

松田3つ目は「出会い」です。
これは自然や景色はもちろん、人や動物、食べ物もそうです。特に人で言うと、一緒に仕事している仲間なんて私が旅をして出会った方やこういったライフスタイルを送っていることに興味を持ってくれた方がほとんどなんですね。

ツアーと、主体的なアウトドアや旅の違いってあると思います。主体的に活動することで、そこで出会った方も主体的に僕と向き合ってくれるんですよね。そういう出会い方を求めて自然に触れ合おうとしているところもあります。なので自転車や登山なども手段なんですよね、それを通してこれまで申し上げた魅力を体験したいという。

「自然と人」のバランスが作り出す場に心惹かれて行く

—これまで色々と旅をして自然に触れてきたと思いますが、特に好きな場所っていうのはあるんですか?

松田:北海道の美瑛ですね、あそこは本当に良くて。美瑛って「パッチワークの路」っていうのがあって丘陵地帯に畑があるんですね。あとは「青い池」という絶景スポットもあるんですが、畑って人工的なものだし、青い池も溜め池なんで人工物なんです。

—え、青い池ってそうなんですか!

松田:はい、完全に手つかずの自然ももちろん素晴らしいですが、自然と人間がうまく共存している場所、というのが美瑛で感じる魅力なんですよね。都会に住んでいると完全に自然だとハードルが高いと思うんですが、そうやって共存しているところっていうのはすんなりと入りやすいですよね。
photo by ケント白石
松田:四国の高知県も素敵だなって思っています、自然と人間のバランスが良い。人をウェルカムするような文化も残っていて、交通の便があまり良くないからこそ手つかずの自然も残っている。綺麗な川がいっぱい流れていて、山も海もあり人も豊かなんです。あそこは旅で数日行くのもいいですが、ライフスタイルを豊かにする場所として長期間滞在できると、より楽しめると思います。
Photo by 高知家 エクストリームトラベル社

ライフスタイルとしてのアウトドアで、体験を伝えていきたい

—普段から必ず携帯している道具ってありますか?

松田:まずひとつはやはり自転車ですね。今度(※この取材の次の日に)高知県に行きますが飛行機に乗せて持っていきます(笑)。

あとは仕事を旅先でしますのでMac、そしてiPhoneとPocket Wi-Fiです。私のようなライフスタイルを送るには先ほど申し上げた“価値観のシフト”と“デジタルに強くなる”ことが必要で、これさえできればチャレンジできると思っています。デジタルを使いこなせるかどうかで活動の自由度はかなり変わってきますからね。

—松田さんはがっつりアウトドア、というよりもライフスタイルとしてアウトドアを取り入れていますよね。

松田:そうですね、アウトドアの仕事だけをやっているわけでもないですし、装備もアウトドア用のフル装備というわけでもないですが、ライトにと言いますか自然に身を置いて得られることや感じられることを大事にしていきたいと考えています。

—今後はどういったことをされていく予定ですか?

松田:インターネットなどの発展で、誰しもがアウトドアや自然を疑似体験できる時代になってきていますが、だからこそ体験の価値が上がると思っています。先にお話した3つの魅力は僕にとっての話ですが、きっと皆さんにも当てはまるものだと。なので、もっと外に向けてアウトドアの魅力を発信していけたらいいなと考えています。そのためには常に体験に触れていかないといけないなと思っています。

—「自然を楽しもう!」をコンセプトに、アウトドアのリアルな体験を届けることをしている.HYAKKEIにぴったりですね。

松田:子供の頃ってこうやって無邪気に外で自由に楽しんだりしていたのに、大人になると「これはお金にならない」とか変なブレーキがかかってて楽しめてないことってありますよね。そういう人たちに、僕のようなライフスタイルを見てもらって「あ、こういうやり方もありなんだ」って思ってもらえたら良いなと思います。

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自ら『ワークライフミックス』を体現し、それによって多くの方々に影響を与えている松田さん。松田さんの『仕事×旅』によって生まれたこれまでの記事はこちらからご覧いただけます。
是非、旅で出会った自然たちをお楽しみください!

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ライター:
羽田裕明
タグ: 自然ビト