「撥水(はっすい)性」という言葉を聞いて、防水や耐水と何が違うのかと疑問に思ったことはありませんか?「防水のレベルの低いものが撥水なのでは?」と勘違いしている方も多いかもしれません。
今回は「撥水性」についての正しい知識と、水をはじく仕組みについて詳しく解説します。これを読めば「撥水性があれば防水性は不要なのか」というよくある疑問も解決し、使うシーンや自分の好みに合った素材選びができますので参考にしてください。
「撥水」と「防水」と「耐水」、それぞれの意味と違いを解説します。
「三省堂 新明解国語辞典第八版」には下記のように、定義されています。
撥水:水をはじくこと
防水:水が流入したりしみ込んで機能を損なったりしないよう手当てをすること
耐水:水を通さない(水に濡れても変質しない)特徴を備えていること
多くの方が「何が違うの?」と混乱する理由として、水をはじく「撥水」が、結果的に水を流入させない「防水」の意味を持つからです。意味が被っているからややこしいんですね。
より分かりやすく説明すると、「撥水」は水をはじくが水が流入しないわけではない、「防水」は水の侵入を防ぐが水をはじくかどうかは関係ないということになります。
ちなみに、「防水」と「耐水」は一般的には同じ意味で使われることが多く、細かい説明は今回省略します。
撥水性のある生地は、表面に撥水基(はっすいき)と呼ばれる分子レベルの突起を付着させることによって、水を玉状にコロコロはじくよう加工がされています。
防水性のある生地は、生地そのものを水を通さない素材で作ったり、防水フィルムを生地に貼り付けたりすることによって物理的に水が浸入できないよう壁を作っています。
撥水性のある生地は汚れの付着や摩擦によるダメージで、使用しているうちに撥水基が倒れたり取れたりしてきます。これが撥水性が落ちたという状態です。「撥水性」と「防水性」を兼ね備えたウエアであれば、撥水性が落ちても防水性が落ちたことにはならないので、「撥水性」と「防水性」の機能は全く違うことが分かります。
「撥水性」と「防水性」の違いが分かったところで、なぜ撥水性が必要なのかを解説します。「防水性」があれば「撥水性」は不要ではないかと思われる方もいるかもしれませんが、「撥水性」があることで快適さに大きな違いが生まれます。
撥水性が落ちて生地に水がしみ込みやすくなると、体から出た湿気が逃げず、ウエアの中が蒸れやすくなります。最近では水は通さず湿気だけを逃がす透湿防水素材が使われている製品も多く、撥水性はこの蒸れにくさを保つうえでとても重要な役割を持っています。
水をはじくことで泥汚れなども付きにくくなるので、ウエアなどのお手入れがラクになります。また簡単に水滴を飛ばすことができるので、雨でぬれたときも手でパッパッと叩くだけですぐに家に入れるなど、撥水性があることで利便性が上がります。
撥水性は人工的に作ったコーティングですので、使っているうちにその効果は落ちてきてしまいます。撥水性をできるだけ長持ちさせるために気をつけたいポイントをお伝えします。
洗濯するときは撥水基へのダメージを少なくするため、ファスナーやベルクロテープはすべて閉じて洗い、紫外線を当てないよう日陰で乾かします。洗剤残りも撥水低下の原因になるため、洗剤はやや少なめ、すすぎは多めがポイントです。
撥水基は熱を加えると復活する特徴があるので、低温のドライヤーで温風を当てることや、洗ったあとに標準温度での乾燥機を使用することは撥水効果を保つのに有効です。ただし高温すぎるとポリエステルやナイロンの素材は溶けてしまうので注意が必要です。
熱を加えても撥水効果が復活しない場合は、市販の撥水スプレーをかけて撥水基をもう一度付着させれば効果が戻ります。一般的に防水スプレーと呼ばれる商品でも、撥水性を与える効果しかないので、撥水スプレーでも防水スプレーでもどちらを選んでも同じです。
「撥水性」について分かっているようで意外と知らなかったこともあったのではないでしょうか。仕組みや違いが分かれば「このシーンなら撥水性だけで大丈夫かな」「防水性もあった方がいいだろうな」といった正しい判断ができるようになりますね。
雨のシーズンでも撥水性のある素材を選べば、外遊びやアウトドアをストレスなく楽しむことができますので、使うシーンをイメージしながら自分に合った商品を選んでみてください。
参考:
・DAIWA
・ゴアテックスブランド
・マスダ株式会社
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