急激な空気の圧縮で起こる発熱を利用した知る人ぞ知る火起こしアイテム、ファイヤーピストンをご存知ですか?シンプルながらも奥深い、ファイヤーピストンでの火起こしの魅力や使い方、コツを紹介します。
ファイヤーピストンは、圧気発火器(あっきはっかき)とも呼ばれる、ブッシュクラフターに人気の火起こしツールの一つです。ピストン状の形をしており、ライターやバーナーを使わずに空気の力で火起こしできるので、より原始的なキャンプスタイルを求める方に愛用されています。
ファイヤーピストンの魅力はなんといっても、ライターやバーナーなどの近代的な火器に頼らず、火種を作り出せること。火を起こすこと自体を楽しめ、達成感を味わえます。最低限の道具で、より自然との一体感とサバイバルの気分を味わえる、ブッシュクラフトに最適な火起こしアイテムです。
慣れないうちは扱いが難しいですが、摩擦式の火起こし器と比べて難易度が低いので、これからブッシュクラフトをはじめる方にもおすすめの道具です。
ファイヤーピストンの構造は、片方の端が密封されたシリンダーにピストンが入ったシンプルなものです。ピストンを手で押し下げることで空気が圧縮され、着火する仕組みになっています。
使用する際はシリンダーの中もしくは先端に、麻紐やチャークロスと呼ばれる炭化させた綿製の布を着火剤として詰め込み、ピストンでシリンダー内の空気に急激な圧力を加えます。
なぜそんな単純な仕組みで発火するかというと、空気は圧力を加えると、それを押し返そうとする逆の運動エネルギーが発生し、温度が上がるからです。ファイヤーピストンはこの原理を利用しています。
ファイヤーピストンのルーツは諸説ありますが、マレー半島やフィリピン諸島など、東南アジアで生まれ、16世紀に訪れたヨーロッパ人により広められたとされています。
当時のものは、木や動物の皮などで作られていました。今では世界中に広まり、素材は金属などに置き換わりましたが、基本的な構造は変わりません。
・ファイヤーピストン(シリンダーとピストン)
・着火剤となる可燃物(解した麻紐、綿製の生地を炭化させて作ったチャークロス)
ピストン(押子)をシリンダーから抜き、ピストン先端の窪みに火口となる可燃物を詰めます。詰め方のコツは、ぎゅうぎゅうに詰め込みすぎないこと。詰め込みすぎると燃焼のための酸素が足りず発火しにくくなるので、空気を含むようにふわっと詰めましょう。
可燃物を詰めたピストンをシリンダーにセットして押し、シリンダーに圧力を加えます。その際のコツは、素早く全体重をかけること。ゆっくりと力を加えてしまうと、空気が抜けやすく、うまく圧力がかからないので注意しましょう。
ピストンの押す側を下に向けシリンダーを引き抜き、火種を取り出します。このときにうっかり火種を落とさないように注意しましょう。
焚き火をする場所に麻紐やチャークロス、フェザースティックなどをセットし、火種を乗せます。手で風を遮りながら、優しく息を吹きかけ空気を送り、徐々に火を大きくしていきます。
ファイヤーピストンに火がつかない!そんなときは下記のポイントをチェックしてみてください。
ブッシュクラフトでの焚き火の着火アイテムとして人気の、ファイヤーピストンとメタルマッチ、どちらがおすすめなのでしょうか?それぞれの利点、注意点を紹介します。
メタルマッチは、可燃性のあるマグネシウムのスティックをナイフなどで削ることで着火します。その利点は、麻紐やチャークロスなどの火口がなくても着火できること、着火までの手間が少ないこと。また、美しい火花を楽しめる点も魅力です。
ナイフを使ううえに火花が散るので、安全面ではファイヤーピストンより気を遣う必要があるのが注意点です。またメタルマッチは消耗品なので、使い続けて摩耗した際は交換が必要です。
ファイヤーピストンは、ナイフなどを使わず火花も起こらないので、メタルマッチよりも安全に火起こしができる点が優れています。
その反面、麻紐やチャークロスなどの火口を必要とするので、これを忘れてしまったり、フィールドで調達できないと火が起こせない欠点があります。内部の掃除やゴムパッキンの状態のチェックなど、メンテナンスも必要です。
シンプルながらも奥深い道具、ファイヤーピストンは、物理の原理を利用した火起こしをより楽しくするアイテム。お気に入りのファイヤーピストンを手にしてフィールドに繰り出しましょう。