カテゴリー:

クルマとアウトドア|#3 20代の若者がハマるワーゲンバスキャンプの魅力とは

オートキャンプを愛するキャンパーにとっては、自身のマイカーも重要なキャンプギアの一つとなります。

今回は1970年代以降、自由の象徴としてキャンパーを問わず人気を博したヴィンテージカー「ワーゲンバス」でキャンプを行う若者を紹介します。

話をうかがったのは愛知県在住の木村 賢人さん。1957年式のワーゲンバス(VW TypeⅡ)を乗りこなし、キャンプやアウトドアライフを楽しんでいる20代の男性。そんな木村さんに、ワーゲンやヴィンテージギア好きならではのキャンプの魅力を語っていただきました。

ワーゲンバスは乗っていてワクワクする車

──まずは木村さんの愛車歴について教えてください。

今の愛車は1950年代に製造されたフォルクスワーゲンのTypeⅡです。以前は同じく50年代に製造されていたビートル(VW Type1)を所有していました。ヴィンテージのワーゲンには6年ほど乗っていますね。

──もともとヴィンテージカーが好きだったんですか?

大学の時の同級生がシトロエンの2cvという車を所有していて、ドライブへ誘われたのがきっかけでヴィンテージカーが好きになりました。でも、ただ古さに惹かれたというよりは、ヴィンテーカーの持つ独特なデザインや雰囲気が気に入ったって感じですね。

──なるほど。木村さんがキャンプをするようになったのも、やはりワーゲンバスを買われたからなのでしょうか?

そうですね、キャンプにハマったのはワーゲンバスを買った後です。ワーゲン仲間の中でもキャンプに行く人は多くて以前からキャンプには興味は持っていました。ワーゲンバスを買ってからBBQやデイキャンプをする機会が多くなり、そのタイミングで焚き火台やらランタンなどのギアをコツコツと集めるようになりました。
その時くらいから、ワーゲンバスでキャンプすることがすごく面白いなって感じたんです。その思いが高じて、今に至る感じですね。

——ちなみに、ワーゲンバスには様々なタイプがあると聞きます。木村さんの車はキャンピング仕様の車なのでしょうか?

以前のオーナーがショップに頼んだという50年代当時のオリジナルキャンパーを再現した内装を積んでいます。

もともとワーゲンバスには商用仕様のバンからキャンピングカー仕様のものまでいろんな種類があるらしいのですが、自分のはコンビというタイプがベースとなっています。
後部座席はそのままベットにもなるので、テントを持っていかなくても車中泊でキャンプを楽しめる仕様になっています。

──とても雰囲気がある内装ですね!ご自身でキャンプ向けにカスタムされた部分はあるんですか?

自分が乗るようになってからは室内にはカーテンを付けたり、荷物を運搬するためのキャリアを付けたりしています。ワーゲンショップへエンジンのオーバーホールなどお願いしたりして、走りの面でもより使えるキャンパーになるよう少しずつ手を加えています。

──ここまで手を加えてあると、色々な場所に行ってキャンプする楽しみ方もできそうですね。

そうですね。今まで西は琵琶湖、東は神奈川までキャンプをしに行ったことがあります。これからはさらに足を伸ばしてみたいと思っていますね。よく古い車って運転してて疲れるんじゃないかって言われるんですが、ワーゲンバスは不思議と気にはならないんですよ。むしろ運転しているとワクワクが止まらなくなる、ワーゲンバスってそんな車なんです。

──やっぱり運転が楽しく思えるからですか?

それも気持ち的にあると思います。はっきり言って決して便利な車ではないのですが、なんかこう車という機械を動かしている感覚がはっきりとあるんです。そこもデジタル化されている現代の車とは違った大きな魅力だと思います。

‘非日常’を楽しめるヴィンテージキャンプ

──キャンプを始められたのはいつごろなんでしょうか?

大体2年前くらいですね。コツコツと道具を集めていますが、ようやく「これだ!」という自分のスタイルが定まってきたような気がしています(笑)

——木村さんが持っているギアも車と同様、ヴィンテージの物が多いですよね。やはり、古い物へのこだわりがあるのでしょうか?

いえ、単に古いから好きってわけでもないんです。でも、古いキャンプギア、特にランタンなんかは構造が単純で修理がしやすかったり、あとはデザインが自分好みなので使っている感じです。タフなものが多いのも良い点かなーと。それに、万が一ギアへキズがついてしまっても「これはあの時の、ああこれはこの前の〜」みたいな感じで思い出の年輪みたいな感覚で扱えます。もちろん、本当にキズつけてしまった時はショックですが(笑)

──ちなみに、一番お気に入りのギアは?

コールマンのツーバーナー「413C」ですね。買ったときから安定しているわけではなかったんですが、たまたまSNSで交流していた方に修理をお願いすることなりました。これがきっかけでツーバーナーの仕組みやパーツの互換性もひたすら調べましたね。ギアがきっかけで交流が深められたりするのも、ヴィンテージギアならではのいいところだなあと思います。

──ヴィンテージのギアが揃っていると、サイト全体が独特の雰囲気になりますね。

個人的にキャンプの魅力って四季を五感で感じ、非日常を楽しむところにあると思っています。ヴィンテージの車とキャンプギアって、現代の製品と 比べると使用方法や使っている材料が全く違ったりします。なので、デザインも全然違いますし、道具自体から独特な雰囲気を感じさせてくれるんです。日常生活では使うことがない道具たちに囲まれて行うキャンプは、非日常の体験をさせてくれます。そういう点も、ヴィンテージギアやワーゲンバスで行うキャンプの魅力の1つだと思いますね。

自然と引き継がれている、ワーゲンバスのカルチャー

──木村さんのキャンプ仲間も古いクルマに乗られている方が多いのでしょうか?

そうですね。キャンプ仲間は同じワーゲンに乗っている方がほとんどです。ワーゲンでキャンプという共通の趣味があるため、住んでいる地域や職業など関係なく、打ち解けあっている感じです。ワーゲン仲間とはキャンプはもちろん、一緒にミーティングなどのイベントへ参加したりしています。

──ちなみに、ワーゲンキャンパーってどんな人達がいるんでしょうか?

よくキャンプを一緒にする方々は、僕の憧れる「その人独自のライフスタイル」を送っている方が多いです。雑貨屋を営んでいる方だったり、ハンドメイドの世界でオリジナリティ溢れる作品を作っている方だったり…とにかくエネルギッシュな方が多くて、そういう方々との交流もすごく楽しいです。

──ワーゲンバスはかつて自由の象徴として親しまれていた時期もありましたよね。

ワーゲンバスの歴史についてそこまで詳しいわけではないのですが、そのカルチャーは現代のワーゲン乗りにも受け継がれているような気はします。キャンプはもちろん、普段のライフスタイルから自由を追求しながらも自然に過ごしている人が多いような気がするんですよね。

──ちなみに、木村さんのような若い世代のワーゲンキャンパーもいるんですか?

最近は20代や10代の若いワーゲンキャンパーさんが男女を問わず増えてきている気がします。ワーゲンのイベントで見かけたり、instagramで気になってたワーゲンのオーナーさんへ声をかけてみると、実は年齢が近かったなんて機会も増えてきました。今後もワーゲンキャンプに興味を持つ若い世代の人たちが増えるといいなとは思いますね。

ワーゲン乗り以外にも楽しさを広めていきたい

──キャンプをするようになって、木村さん自身のヴィンテージカーの楽しみ方は変化しましたか?

前に比べて、よりワーゲンバスがライフスタイルの一部になったなーと思っています。これはキャンプ自体にも言えることなんですが、色々な不便なことも楽しめるようになったんです。
あと以前はフォルクスワーゲンという車へのこだわりがあったんですが、キャンプをするようになってから、車高とかスタイルはこうじゃないといけないとかの車の流行り廃りはあまり意識しなくなりました。

──以前よりワーゲンバスを生活において欠かせない存在として意識するようなった、ということですか?

そうですね。最近はより広い視点で、ワーゲンにまつわる様々なカルチャーに興味をもつようになりました。自分が実際にキャンプへ行ったり、ワーゲン乗りのキャンパーのみなさんとの交流することで思い描くようになった理想のライフスタイルを送るために、ワーゲンバスが欠かせない存在になってきた気がしています。

──今後はワーゲンバスとどんなキャンプライフを送ってみたいですか?

今後は今までキャンプへ行くことがなかった知り合いや友達をキャンプに誘ってみたいと思っています。なにより、ワーゲンで行くキャンプの楽しさを色んな人に知ってほしいです。ワーゲンに乗っている乗ってない関係なく、このカルチャーが広まっていけばいいなと。そうしていく中で、新しい出会いがあればいいなと思いますね。

60年代〜70年代にかけて、自由の象徴として親しまれたワーゲンバス。そこで生まれた文化は、時代を経てワーゲンキャンパーの人々にもしっかりと継承されているのはないかと感じました。

現代のキャンプブームとは違った角度でヴィンテージアイテムに囲まれたキャンプを楽しむワーゲンキャンパー。特に木村さんのような若い世代の人々が、今後の新しいキャンプカルチャーを作り出していくのかもしれません。


撮影協力:
ひるがの高原キャンプ場

※一部写真木村賢人さんよりご提供いただきました。

シェアする
ライター:
伊藤 太成