エベレスト登頂の経歴を持つ山岳ガイド羽山菜穂子さんと、北アルプスへ1泊2日の素敵なトレッキングへ、と思っていたのですが、羽山さんに着いて行ったら強行の縦走ツアーになりました。
八方〜唐松岳〜五竜岳〜キレット小屋泊〜鹿島槍ヶ岳〜爺ヶ岳〜扇沢 縦走!
白馬八方のゴンドラとリフトで八方尾根へ上がり、そこからまず唐松岳へ。唐松岳は木道や石が積み上がられた階段など、きれいに整備された登山道を歩くことができます。「歩き始めは特にゆっくり歩くように」との羽山さんのアドバイスで、ゆっくりしたペースで歩きます。こうすることで、あまり休憩をとらなくても歩き続けることができるのだそう。
唐松岳への途中には、晴れていれば白馬三山を眼前に見ることができる美しい八方池がありますが、この日は曇り。ガスっていて池も景色も見られませんでした。
唐松岳頂上山荘に着きました。長野県の中学の学校登山でもよく利用されるという大きな山小屋です。
小屋の横で小休止をして、頂上へは上がらず五竜岳へ向かいます。
ここからが難所!と気合いを入れたところで、登山道に雷鳥の親子の姿が。
カメラを向けても逃げることなく、歩いたり砂浴びをしたり親子でのんびり過ごす様子を見せてくれました。
かわいい雷鳥親子に元気をもらって唐松岳を後にしました。
唐松岳から五竜岳への最初の難関が牛首の岩場です。やせた岩稜帯で、固定された鎖を伝いながら登ります。足場も狭く不安定なところもありますが、「あんまり鎖に頼りすぎないように」と言われ、足元を確認しつつ着実に進んで行きます。
途中少し晴れ間も見えてきましたが、五竜山荘まではガレ場が多く、下っては登ってが続きます。ちょっと疲労が出てきたところで、「息を吐くことを意識してみて」と言われました。疲れてきたり写真を撮っていると、無意識に息を止めてしまって体に酸素が回らなくなることがあるそう。そこで、大げさなくらい口で「フッフッ」と音を出してみると、自然に酸素が取り込めるのだとか。
五竜山荘に到着。
ここから五竜岳を通ってキレット小屋へ向かいます。
この先、岩場、鎖場もあり難所が続きます。しっかり休んで五竜山荘を後にしました。
岩稜帯を、手足を使って登ります。岩場の下りもあります。
羽山さんは相変わらずスイスイ身軽に登って行くので、必死に着いて行きました。
それでも前回羽山さんと行った岩場のクライミング体験のお陰か、恐怖感はなく登り下りすることができました。でも、切り立った岩場に全身で挑んでいるので、疲労は最高潮…。
「もう少し」という羽山さんの言葉に繋がれて、なんとか進んで行きました。
岩稜帯を登って下ってを繰り返し、ようやくキレット小屋に到着。
残念ながら、辺りは雲に覆われて景色は全く見えませんでした。
羽山さん曰く「一度は泊まってみたいと思う人が多い」というキレット小屋。断崖絶壁の隙間に建つこの山小屋は、晴れていれば剱岳が目の前に見えるという最高のロケーションと、難所を経ないと到着することができない山上級者憧れの山小屋なんだとか。
そんなキレット小屋に宿泊することができました。
(キレット小屋ではテント泊はできないので要注意)
小屋の中は掃除が行き届いていてとてもきれいです。蚕棚式の部屋が2階にあり、1階に食堂やフリースペースなどがあります。
夕食は英気を養うのに十分な味とボリュームで大満足!
食堂にある本棚には、山に関する本や雑誌などが並んでいます。
山小屋にある本棚を眺めるのが好きだという羽山さん。「山小屋に泊まるときは、その本棚にある山に関する本をゆっくり読むのがおすすめ」だそう。
とはいえ、明日に備えて早めの就寝が大事です。
が、その前に今日の疲れをほぐすストレッチを羽山さんに教えてもらいながらしっかり体のケアもしました。
さて2日目。
早朝、キレット小屋を後にしました。晴れていれば見られるはずの美しい景色はまったく見えず…。
小屋を出てすぐに急峻な岩場の登りです。靄の中、慎重に集中力を切らさないように一歩一歩登って行きます。一気に標高を上げて行くように架けられた鎖やハシゴを頼りに登ります。
登りきった辺りで雲が開けてきました。
顔を上げると間近に山並みが迫って見えます。
昨日も今朝も見られなかった五竜岳が姿を見せてくれました。
そして、「剱も見えるよ!」と羽山さんの指す方向を見ると、一瞬、眼前に剱岳を見ることができました。やっぱりゴツゴツしたあの姿はとても迫力が感じられます。
今回の最高標高地点、鹿島槍ヶ岳山頂に到着。
ふと見ると目の前に雲海が広がっていました。自分が立っている場所の高さが感じられる、壮大な景色にしばし見とれてしまいました。
ゆっくりと稜線を歩きながら、すごいところを歩いてるなぁと感動しつつ、振り返って景色を眺めたり。
冷池山荘で休憩し、爺ヶ岳を通り、種池山荘まで。羽山さんから花の名前を教わりながらしばしお花畑のトレッキングも堪能。
ところが、下りが続いたせいか靴擦れができていました。羽山さんから絆創膏をもらい応急処置。自分の持ち物に絆創膏を入れていなかったことを後悔・・・
種池山荘に着いた頃には雨が降り出しました。「ここまで来ればあとは下りだからもう少し」と羽山さん。カッパを着込んでカメラをリュックにしまい、リュックカバーをかけました。
扇沢までの下りは長い緩斜面が続きます。雨の中ということもあり、足の疲れもピークに達し、一歩踏み出すのもかなり辛くなりましたが、なんとか下山。長い2日間が無事終わりました。
ベテランであり、百戦錬磨のガイド羽山菜穂子さんと歩いた山旅。
羽山さんにお伴する形でなんとか着いて行き、なかなかの強行縦走になったけれど、この2日ですっかり山の魅力に取り憑かれてしまいました。
反省は、荷物の重さ。事前に羽山さんから「軽量化!」と言われていたのだけれど、あれもこれもと入れてしまった結果、不必要な物がいくつもあった気がします。もっと荷物が軽ければ、もう少し楽に歩けたのかなぁと反省。最適な荷造りをできるようになることが、私の次回の課題です。
今回は1泊2日と強行スケジュールでしたが、この行程は2泊か3泊でのんびり楽しむのがお薦めと羽山さん。「次はのんびり行こうね」と言ってくれたけど、さてどこへ連れて行ってくれるかな〜?
1日目
八方池山荘→(約40分)→八方池→(約2時間30分)→唐松山荘→(約2時間20分)→五竜山荘→(約1時間)→五竜岳→(約4時間)→キレット小屋
2日目
キレット小屋→(約2時間)→鹿島槍ヶ岳→(約1時間10分)→冷池山荘→(約50分)→爺ヶ岳→(約1時間)→種池山荘→(約3時間)→扇沢
※この行程は少なくとも2泊3日以上で歩くことがお薦めです。