標高やメンバー、コースタイムなど、山登りに関するあらゆる情報を書き込むことができるコンパクトサイズのノート。服装や装備などを記入できるので、事前準備にも活用できる。
— 山ノートを作ることになった背景を教えていただけますでしょうか。
米村さん: 雑誌『季刊のぼろ』が創刊から3年目を迎えた2015年夏、読者の方々の生の声を聞きたいと思い、アンケートを企画しました。
そのアンケートに答えてくださった方へ、お礼も兼ね、プレゼントを贈ることを決めていました。そのプレゼントを何にすればいいのか考えたとき、取材時にいつも感じていたことを思い出したんです。それは「山に登る人それぞれに物語がある」ということ。
インターネットで最新の情報を手に入れることができる昨今、山の雑誌を紙で作ることの意味を模索しながら『のぼろ』の制作・編集をしてきた私たちだからこそ、読者のみなさんにもそれぞれの大切な山の物語を紙につづってもらいたいと思い、山ノートの制作を思いつきました。
カメラで写真を撮るのと同じように、山ノートと向き合い、自分の手で、山の思い出を紙につづることで、山登りの記憶が深く刻まれるものになればいいな、と思っています。また、きれいな花に出会ったり、山頂からの景色に感動したり、山登りで得た感動や気づきを、自分の手で山ノートに書き残してみてほしい。きっと思い出深い登山になるだろうし、見返すことは、過去の自分と出会う貴重な経験になると思うんです。
— 「書く」という身体行為を通して生まれる思いや気づきが、確かにありますよね。その意味で、紙のノートという形式にこだわるのは、とても面白いと思います。山ノートを、福祉作業所の商品を手がける「日々のてまひま」さんと共同で作ったというのも、素敵だなと思うのですが、どういった経緯からでしょうか。
米村さん:「日々のてまひま」さんとは、以前からお付き合いがあり、いつかご一緒にお仕事ができればと思っていました。山ノートに人のぬくもりを込めたいという思いも強かったので、制作を「日々のてまひま」さんに依頼しました。
— 山ノートの制作には多くの方が携わっていらっしゃいます。商品企画は雑誌『季刊のぼろ』が、制作やデザインは「日々のてまひま」が、イラストは「工房まる」が、製本を「ほのぼのHaKaTa」が手がけてらっしゃいます。実際に山ノートを手に取ると、細部にまでこだわって製作されているのがよくわかります。ノートの左上に穴が開いていて紐が通せる設計になっていたり、ノートの角が切り落とされていたり… これは全部手作業でされてらっしゃるんでしょうか。
「ほのぼのHaKaTa」太田さん:紙を折るところから、製本まですべて手作業で行っています。福祉作業所の商品だからといって、製品のクオリティが落ちるようなことはあってはならないと思うので、細心の注意を払っています。また、「山に登る人それぞれに物語がある」という山ノートのコンセプトにも添えるよう、1冊1冊に魂を込めて作っています。登山者にとって山ノートが、メモや記録という用途を越えて、”お守り”的な存在になればいいですね。
− 「山ノート」のデザイン面で気をつけた点はありますか?
「日々のてまひま」先崎さん:私自身も山に登るので、携帯しやすいサイズ感や強度にこだわりました。また、角を落としてポケットに入れやすくしたりする工夫もこらしています。
— 線画のイラストも大変印象的です。こちらは「工房まる」のアーティストである石井さんが手がけられた、とお聞きしております。石井さんはどんな点に気を配ってイラストを作成されましたか?
「工房まる」石井さん:表紙の絵や登山道具のイラストを担当させていただきました。イラストに山登りのワクワク感を込めつつ、一目で必要な道具がわかるイラストに仕上げたいと思い、仕上げました。
— 読者アンケートのプレゼントとしても反響が高かったこともあり、今後、全国のアウトドアショップやオンラインショップでも販売されるとお聞きしております。
「日々のてまひま」渡邉さん:嬉しいことに、山ノートの反響が予想以上だったこともあって、商品化を決めました。メール注文だけでなく、オンラインでも買えるよう、ホームページを立ち上げました。まだ使ったことのない人たちにぜひお届けしたいです。また、山のノートを通して、山登りの楽しさが広がるといいなと思っています。
— 「日々のてまひま」のことや、今後の展望もお聞かせください。
「日々のてまひま」渡邉さん:「ほのぼのHaKaTa」さんや「工房まる」さんのような、障害のある人たちの就労を支援する福祉施設は、全国に約1万2千カ所あります。ですが、平均の工賃は月1万4千円と低く、自立を目指すには高いハードルがあるのが現状です。
また、福祉施設の職員さんも、障害のある利用者さんの心身のケアが中心となるので、なかなか商品やサービスの販売活動に時間を割けない状況にあります。
そこで、私たちが企業のニーズと福祉施設の商品やサービスをつないでいくために情報を集め、整理してお互いがハッピーになるマッチングをつくっていけたらと考えています。
今回の「山ノート」では、地元福岡で素敵なマッチングができました。今後は「山ノート」の魅力を全国に発信していきたいと思います。
p>ぜひ一度「山ノート」を持って山登りに行かれてみてはいかがでしょうか。
「山ノート」は下記のオンラインショップでご購入いただけます。
http://hibitema.com/product/yamanote.html
「山ノート」は取引先を絶賛募集中です。ご興味のある方は下記にお電話ください。
電話番号:092-403-0091
雑誌『季刊のぼろ』の案内ページ
http://www.nishinippon.co.jp/book/topics/2016/09/-vol142016.shtml
「日々のてまひま」(ふくしごと)について
http://fukushigoto.co.jp