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人気ランキング上位の白馬岳から五竜岳へ、2泊3日の縦走登山!(前編)

長野県と富山県にまたがる、後立山連峰に位置する「白馬岳(標高2,932m)」。人気ランキングは毎年上位をキープし、富士山や高尾山などにも劣らない、多くの登山客で賑わう山です。

本格的な夏らしくなってきた7月某日。仕事仲間のカメラマン2人とともに、この「白馬岳」から「五竜岳」への2泊3日の縦走登山に行ってきました。

神秘的な白馬大池に息をのむ

早朝6:00、最終日の五竜岳から下山する際に利用する、「白馬五竜テレキャビン」の駐車場に車を1台デポして、白馬岳側の「栂池パノラマウェイ」へもう1台で向かいます。下山後、テレキャビンに置いておいた車で栂池に向かうという寸法です。縦走登山時は車が2台あると、交通機関の時間に縛られず、自由に計画が立てられるのが嬉しいところ。

写真はゴンドラとロープウェイを乗り継いで「自然園駅」に着いたところ。バックパックにヘルメットが見えますね。そう、白馬五竜の縦走ルートには、2日目に「不帰(かえらず)のキレット」という難所が控えています。

同行者2人は北穂高岳の「大キレット」をクリア済みですが、私はキレット初挑戦。ヘルメット使用も初体験で、不安と緊張の入り交じった初日でした。

登山開始直後は雲に覆われ、視界はゼロ。「天狗原」と呼ばれる広々とした湿地を抜け標高を上げていくと雪に出くわしました。今回はルートに選びませんでしたが、さすが日本三大雪渓のひとつ「白馬大雪渓」を擁する白馬岳。

数時間ほどで、「白馬大池」に到着。標高2,379mにあるこの池は、かつては雨乞いの神を祀る霊地として崇められていたそうで、半竜半人の怪物が棲みついているという伝説もあったとか。あまりに美しすぎるため、その神秘性が人々を畏れさせたのかもしれません。

白馬大池ほとりの「白馬大池山荘」で一休み。池の景色を楽しんでいると、雲の切れ間から青空が顔を出し、手前の尾根筋「雷鳥坂」の先に目指す白馬岳が少しずつ姿を現します。

雷鳥坂で出会った特別天然記念物

白馬大池を出発し、雷鳥坂ルートを進みます。途中、何度も振り返りながら、白馬大池の美しさに見惚れていると、足元に小さな動く物体が……。
そう、特別天然記念物の「ライチョウ」のヒナです。周囲を探してみると、親鳥1羽を追うように、3羽のヒナが駆け回っています。

以前、同じ北アルプスの常念岳でも出くわしたことがありますが、これほど間近で見るのははじめて。興奮を隠せません。ルート名が雷鳥坂とはいえ、本当に出会えるとは思ってもみませんでした。

登山者の残す残飯に引き寄せられたライチョウの捕食者、ハシブトガラスとの生息域のバッティング。また、温暖化によりシカやサルの生息域も高山帯に拡大。餌の競合だけでなく捕食されることもあり、日本国内では約3,000羽程度しか生息していないとも言われ絶滅が危ぶまれているライチョウ。

写真を撮り続ける我々をよそに、ヒナを呼ぶ親鳥の独特な鳴き声に先導され、焦る様子もなく一家はその場を立ち去っていきました。

奇しくも今夏はポケモンGOが大流行。レアなポケモンを見つけては一心不乱にモンスターボールを投げつけるトレーナーが溢れています。もちろんゲームはゲームですが、生き物との共存について、改めて考えさせられる出会いとなりました。

白馬岳の山頂からテント場へ

相変わらず、雲に覆われてはチラ見えする青空にやきもきします。しかし、2,500mを超えてくると、さすがにあたりは高山らしい景色に。向かうべきルートがしっかりと確認できます。

時計は12:00を回り、強い日射しを浴びる時間帯が増えてきました。次第に高まる気温から逃げるように標高を上げていきます。

頂上を目前にして、我々を迎え入れるかのように雲が切れ、青空が広がってきました。

約8時間かけて山頂に到着。頭上の雲は少なくなったものの、低いところは雲に覆われ下界の景色を楽しむことはできませんでした。

ひとしきり山頂を楽しみ、今夜の宿泊先であるテント場を目指します。

「白馬山荘」と「白馬岳頂上宿舎」を合わせると、収容人数は1,200人を超えるほど。およそ山小屋という言葉が似つかわしくない、日本最大規模の高山宿泊施設です。(テント場があるのは白馬岳頂上宿舎になります)

テント場も既に賑わっていました。かろうじて3人が隣接できる場所を見つけ、急ぎ設営に入りました。各々食事を作り、ビールや名酒大雪渓でささやかな宴に興じます。

ライチョウとの出会いや白馬岳の山容、明日の行動予定などを肴に話は盛り上がるも、翌日は4時に行動開始。早々に宴を切り上げテントの中で就寝及び明日の準備へ。ほろ酔いになっても拭いきれない不帰のキレットへの不安とともに、寝袋に潜り込みました。

撮影:後藤秀二

後編へ続く)

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ライター:
渡辺 有祐