日常の中に山がある生活。今回は山へグッとフォーカスし、北アルプスでの5日間の単独山行記録についてレポートします。
長野県へ移住してから4か月。日常の中に山がある生活は、以前と比べて山や自然をより身近なものへと変えます。
b>北アルプスといえば槍ヶ岳や奥穂高のイメージが強いかもしれませんが、メジャーな場所の象徴的なピークハントよりも、時間をかけて奥深い場所へ入っていく方が、“山での生活”をより味わうことができるのではないでしょうか。
どんなに最短でもたどり着くまでに1泊以上は必要な雲ノ平。今回は下山も含めて合計4泊5日の単独行。歩行時間にして合計約32時間、高低差約1800mの行程は、これまではせいぜい1泊程度の登山ばかりだった身にとって、なんだか別次元の旅に見えてきました。
早朝から車を運転し、新穂高温泉に到着したのは木曜日の朝6時半。7時前にスタートできれば15時までに双六小屋に着く算段です。
しかし、新穂高温泉施設の前では車を駐車できないことが分かり、係員の案内で元来た道を戻って深山壮という山荘の手前にある無料駐車場に停め、そこから登山道を目指ことに。
駐車場まで行ってみると、7時前で駐車場は脇道にまで車が止まっています。
ちょうど軽自動車がギリギリ停められるスペースを見つけることができましたが、すぐ後に入ってきた大型のSUVは途方にくれていました。駐車場にはもっと早い時間に到着する必要がありそうです。
この時間ロスにより、結局スタートは8時に。双六小屋まではギリギリの時間になるので、ややペースを上げて登り始めます。
新穂高センターで入山届を出し、手持ちの地図と計画表で改めてルートを確認してから、いざ登山口へ。
アスファルトの長い林道を進んでいると、曇り空だった天気は途中から雨に変わってしまいました。急いでレインウェアを着込み、バッグにレインカバーをかけます。
わさび平小屋を過ぎて小池新道に入ると、本格的な登山道が始まります。
br />b>※山の状況やシーズンによっては水場の水量が十分でない場合もあります。必ず事前に最新情報をご確認ください。
途中、最初の雪渓が現れました。まだ登り始めて2時間程度なのにもう雪渓です。登山客が多いため踏み跡がはっきりしているし、傾斜もないのでアイゼンを付けるほどではありませんが、滑らないよう慎重に渡ります。
登山道の傾斜も徐々にきつくなっていき、標高1700mまで上がったところで、秩父沢出合に着きます。
あまり長居すると体に影響が出そうなので、立ったまま行動食を少し食べ、沢で水を補給してから登り始めました。
秩父沢出合から木々に囲まれた岩場を登り、シシウドケ原まで来ると、ついに2100mの世界へ入ります。
谷間を1時間ほど登り、300mほど標高を上げると、ようやく鏡平山荘へ着きました。静かで鏡のような池の隣にある山荘は、広いウッドデッキに休憩用のテーブルがたくさんあるので、ここで休憩を取ります。
到着は13時。朝の遅れを取り戻すべく、かなりのオーバーペースで登ってきたため、体調は良いとは言えない状態でしたが、きちんと食べておかないと後半持たないため、さっそくお湯を沸かして昼食を作ります。
山小屋はなるべく15時台に着くことが理想なので、体力に自信がない人や、スタートが遅い人は、初日は鏡平山荘に泊まることをお勧めします。
鏡平山荘からの道を1時間登ると、弓折岳へと通じる稜線へ出ます。
前半のハイペースと降っては止む雨と霧のせいで、休憩を取ったにも関わらずなかなか足が進みません。ヘトヘトになりながら1時間半かかってなんとか双六小屋までたどり着きました。到着時間は16時。山小屋へ着く時間としてはギリギリの時間です。
山小屋のスタッフに案内された部屋は6人部屋。埋まっていましたが、木曜日ということもあり一人につき布団一枚分でした。
部屋に荷物を置き、濡れたジャケットを乾燥室で干し、すぐに始まった夕食を食べ終わると、どっと疲れと眠気が押し寄せ、すぐに布団に入って寝てしまいました。
朝5時に起床。19時までは記憶があったので10時間くらいは爆睡したことになります。
br /外は昨日とは打って変わって雲一つない晴れ。6時には出発予定でしたが、昨日はまったく見えなかった周囲の景色に感動し、ついつい小屋周辺をウロウロしているうちに、出発が7時になってしまいました。
双六岳から三俣蓮華岳へと縦走する稜線コースを歩きます。
7時半に双六岳、そして稜線を歩いて8時半に三俣蓮華岳の山頂を踏み、小休憩をはさんだ後、稜線を下りながら黒部吾郎小舎を目指します。
木々と藪に囲まれた岩だらけの細道を降りていくと、急に開けた草原に出ます。その中に静かに佇むのが黒部五郎小舎。草原では北アルプスの名花、コバイケイソウが満開の時期を迎えていました。
次回は黒部五郎小舎の様子と、黒部五郎カールの絶景についてお伝えします。
・車で行く場合、駐車場は早めに確保。
双眼鏡。
※注意※
イラストレーション:Masatoo Hirano