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“自発的”にアウトドアを楽しむ場所、老舗キャンプ場の代表格『猪苗代湖モビレージ』

キャンプの回数を重ねていくと、不思議とキャンプ場のオーナーさんと話をしてみたくなることがあります。

そして、何人ものキャンプ場のオーナーさんと話をする中で、毎回必ずと言っていいほど出てくるキャンプ場の名前があります。

それが今回取材をした「猪苗代湖モビレージ」。

来年で50周年を迎える老舗キャンプ場の歴史とこれからについて、そして、アメリカのキャンプ場事情についても伺ってきました。

祖父、父、そして私が受け継いで、このキャンプ場は3代続いています

ーー猪苗代湖モビレージの管理人でいらっしゃいます、小松克年さんにお話を伺います。よろしくお願いします!

よろしくお願いします。

ーー老舗キャンプ場の猪苗代湖モビレージですが、キャンプ場が始まってからここまでを教えて下さい。

はい、おかげさまで来年で50周年になります。

もともとは埼玉県に住んでいたのですが、祖父・祖母が自然の中で働ける場所を作ろうということで、私の父が中心となってこのキャンプ場を始めました。

昭和42年に開設、祖父・祖母が62年まで運営をし、63年に父が会社員を辞めてキャンプ場の経営に本格的に関わり始めました。63年から10年間、父がキャンプ場経営に携わった間にオートキャンプブームが起きて、夏休み中はずっとキャンプ場の満員が続いている、そんな時代でしたね。この時期からキャンプ場もポツポツと増えてきました。

オープン当初のチラシ。非常に貴重な資料です

ーーどこのキャンプ場に行っても開業する時は「猪苗代湖モビレージを参考にした」とキャンプ場のオーナーさんがおっしゃってました。当時、キャンプ場って日本にはなかったんですか?

ほとんどなかったそうですよ。今から50年近く前の話ですし。

もともと父が旅行代理店のような所で働いていて、外国にたくさん行く機会がありました。アメリカやカナダなど色んなところを見てきた結果、キャンプ場を始めたいと思ったのが最初のキッカケだったそうです。
アメリカではすでにキャンプ場があって、キャンピングカーやトレーラーもたくさんあって、日本でも必ずこれが主流になると考えていたそうです。

ーーその思い切りがすごいですよね。キャンピングカーに関しても普及に尽力されたとか。

主にキャンピングトレーラーの普及に尽力してました。当時は色々と規制があって、トレーラーのナンバーも取れないような時代でしたけどね。父自身もキャンピングトレーラーに魅了されていたので、ハイマーというヨーロッパのトレーラーを引っ張って出かけていました。

猪苗代湖モビレージは”自発的に”アウトドアを楽しむ場所

ーーモビレージに来るお客様は何を楽しんでますか?

時期にもよりますけど、のんびり過ごす方が多いですね。目の前に広がる猪苗代湖で夏は湖水浴、春から秋にかけてはカヌーを楽しんで頂いています。ツアーをやっているわけではなく、自分の力で漕いで進んでいくことを楽しんでもらいたいと思っていますが、49年やって水の事故は1度もありません。

自分でやって楽しんでもらうので次来る時は、ご自身で道具を準備してもらいます。そうやってアウトドアを自発的に楽しむようにしてもらってますね。

なので、レンタルが終わると「これ、いくらくらいするんですか?」なんてことはよく聞かれますよ。

ーーモビレージはキャンプ場全体からのんびりするような雰囲気を感じます。

福島県という土地柄、関東から少し遠いので1泊2日のキャンプももちろん楽しめますが、どちらかといえば2泊、3泊と楽しんでももらえる長期滞在型のキャンプ場を目指してますね。平日に4泊とかされる方もいらっしゃいます。

ーー4泊!いいですね。

そうですね。2泊、3泊とゆっくり自然の中で過ごせるようになっていったらいいなーと思います。

ここは自然を求めると猪苗代湖があって、百名山の磐梯山があって。山登りをする方も多数お泊まり頂いてます。裏磐梯に行けば五色沼もあります。

他にもここから30分程度で行ける会津若松は昔、城下町でしたから歴史・文化も豊かで見るところがたくさんあって楽しいんですよ。食べ物も美味しいです。白虎隊もありますし、会津魂、人情もあります。

ぜひ、ここに来たら連泊をしてゆっくり過ごしてもらいたいです。

磐梯山の山頂から見る猪苗代湖

ーーキャンプブームは感じますか?

震災があったので、よくわからないというのが正直なところですね。なんとか戻ってきたかなーという印象です。

逆を言えば、ブームがあって戻ってきたという言い方もできなくはないですけど。ここ最近は新しく来てくださった方も増えてきていて、若いご夫婦でキャンプを楽しんでいる人が増えたようには感じますね。

ーーキャンパーさんとよくお話をする管理人さんもいる中で、小松さんはあまり深く話をしないですよね。

そうですね。私自身の性格もありますけど、ここではゆっくり自由に、それぞれで楽しんでもらいたいと思っています。もちろん、キャンパーさんが話をしようと思って私のところに来てくださった時は話をしますけどね。無理やり話をしようとは考えてません。

ーーつかず離れずの雰囲気が個人的にはすごく好きです。

アメリカのキャンプ場は、セルフで受付?!

ーー小松さんは、海外のキャンプ場事情にも詳しいですよね。

海外に行ったキッカケは、父親が会社員を辞めてキャンプ場の運営に携わるというタイミングで、キャンピングカーでアメリカとカナダを1ヶ月家族で周ったのが最初でした。

1989年当時の写真(ヨセミテ国立公園)。※画像提供 小松さん

その後は私の新婚旅行で同じくキャンピングカーで行って、昨年は娘と2人でテント泊で行ってきました。そこは湖があって山があって、ここと似たような雰囲気がある場所で、ずっとここにテント泊をしたいと思っていたのです。

「こういうキャンプ場になったらいいな」っと思っていたある意味、理想のキャンプ場がそこにはありました。

ーー理想のキャンプ場とはどういう意味ですか?

アメリカのキャンプ場では受付がセルフのところもあるんですよ。キャンプ場内を周って空いているサイトがあったら、自分で紙に必要事項を記入してポストに入れて、そしてサイトに入っていくんです。
日本もそういうシステムになったらいいなーなんて思ってますね。

アメリカのキャンプ場の受付 ※画像提供 小松さん

ーーここ最近はキャンプブームだと言われていて、マナーがあまり浸透していないという問題がありますけど、その辺アメリカではどうなっていますか?セルフで受付をするというところが気になります。

まず、テントが張れるオートキャンプ場というものがそれほど多くないんです。キャンプ場なんですけど、基本的にはキャンピングカーが主流になっているので、日本でいうRVパークと似たような感覚ですね。テント泊をする場合は、国立公園内やナショナルフォレストなどの場所でキャンプすることができます。

言ってしまえば、テント泊することのハードルが日本に比べて高いので、そこへ行ってまでテント泊をする人がワイワイガヤガヤ騒ぐかって言ったらそうではないですよね。自然を楽しみに行ってますから。その辺は日本と違うところかもしれません。

ーーなるほど。チェックイン、アウトはどのようになってますか?

チェックアウト時間は書いてありますけど、チェックイン時間の指定は特にないんです。空いたところを探して、必要事項を記入して、お金を入れて。人気のキャンプ場だとほとんど午前中でいっぱいになっちゃうんですよ。9時とか10時にはいっぱいになります。

昨年行ったアメリカのキャンプ場での1枚 ※画像提供 小松さん

これもまたおもしろいのが、国立公園内のビジターセンターのような場所にボードがあって「どこそこのキャンプ場は昨日、何時にいっぱいになりました」というのがわかるようになっているんです。

ーーすごい!キャンパーとしては一目瞭然なので助かりますね。

キャンプ場についてぐるーっと場内のキャンプサイトを探しに回っていると「ここ空くからどうぞ。受付をしてきなさいね」なんて声をかけられたこともありました。それはキャンパー同士の会話ですよ。良い文化ですよね。

ーー管理人さんは完全に不在なんですか?

グラウンドマネージャーという方がいらっしゃいます。ただ、お手伝いをしているという形で、日本でいうところの管理人さんというものとは少し違いますね。キャンプサイトがいっぱいになったら「FULL」という看板を入り口に出したり、ちょっとした案内をする程度の方です。

それで成り立っているところをみると、アメリカはアウトドア先進国だなーって思いますよね。

より自発的に、アウトドアがより楽しめるキャンプ場を目指して

ーー来年50周年を迎えるわけですが、そこから先の展望はありますか?

先程の話と重なる部分もありますけど、アメリカのキャンプ場のようにセルフで楽しめるようになっていってもいいのかなーと思います。もちろんしっかりと受付があって、イベントがあって、というキャンプ場もいいと思いますけど、そうじゃないキャンプ場があってものいいのかなって。

部落の小さな場所でもいいんですけど、5台〜10台くらいしか入れないような場所でキャンプしてもいいですし。夕方になったら地域のおばちゃんがお金の集金をしに来て、それだけで受付が終わるとか。管理されているけど、管理されていないといいますか。

自分たちで受付をして、自分たちで楽しむ。変に煩わしいのではなくて、自分たちで全部楽しめる。当然キャンパーのマナーが向上していかなければいけないですけど、そういったことも含めて自分たちでしっかり責任をもって楽しめるようになっていくといいなーと思います。

ーーマナーの向上、自らの責任で楽しむ、ですね。

キャンプも商業的な色合いの濃いキャンプと、よりアウトドアなキャンプという2種類に分けることができると思いますし、ここは雪深いこともあって「よりアウトドアが楽しめるキャンプ場」でありたいと思ってます。

猪苗代湖、磐梯山、会津の街並み。ぜひ、猪苗代湖モビレージに来て、ゆっくりと自然の中でお過ごしください。

ーーありがとうございました!


来年で50周年を迎える、日本のキャンプ場の原点とも言えるキャンプ場。それが猪苗代湖モビレージです。最近、キャンプがマンネリ化してきた・・・そう感じている方はぜひ、少しだけ足を伸ばして猪苗代湖モビレージへ遊びにいってみてください!

予約時、もしくは受付時に「.HYAKKEIを見た!」とお伝え頂くと、会津のお土産を1つプレゼント!

*猪苗代湖モビレージ
キャンプ、湖水浴、カヌー、登山、会津若松観光など、自然と文化に触れながらゆっくりと滞在できる老舗キャンプ場。
住所:福島県会津若松市湊町大字赤井字笹山原408
予約・問い合わせ先:0242-94-2052
HP:http://www.inawashiroko-mv.com
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ライター:
佐久間 亮介