REVIEW(体験レビュー)

靴が再び息をする日。中目黒で見たヴィブラムの職人技

イベント概要

2025年10月23日、世界的ソールメーカー ヴィブラム(Vibram) が東京・中目黒で日本初の単独リペアイベント『ソール、張り替えてみよー 生まれ変わる靴ー』を開催した。

このイベントは、ヴィブラムが世界的に展開するサステナブルキャンペーン「#REPAIR IF YOU CARE」の一環。

靴底(ソール)の張り替えを通じて製品の寿命を延ばし、持続可能なライフスタイルを提案する取り組みだ。

会場となった calif art gallery / Mid-Century MODERN では、イタリアから来日したマスター職人と日本のリペア職人による技術交流が実施された。

イタリアのマスター職人と日本の熟練職人が、履き古されたHOKA Mafate Speed 2とAdidas Taekwondoを題材に、“張り替え”を通じて個性と技術を競い合うクリエイティビティ対決を行った。


職人が生み出す“生まれ変わり”の瞬間

会場全体は多くの来場者で賑わい、ブランドブースや展示スペースには活気があった。

その一方で、リペアが行われていたのは会場の一画。

喧騒の中にぽっかりと生まれた小さな“静寂のゾーン”だった。

職人たちは無駄のない動きでソールを剥がし、削り、貼り合わせていく。

ハンマーの音、ゴムを削る音、接着剤の匂い。

そこだけ時間がゆっくりと流れているようで、“靴と対話する音”が確かに聞こえた。

使い込まれた革靴やスニーカーが、ヴィブラムソールに張り替えられていく。

同じ靴なのに、印象がまるで違う。

履き慣れた一足が再び歩き出す瞬間を目の当たりにし、

ものづくりの本質は“再生”という行為の中にこそ宿るのだと感じた。

イタリアから来日したマスター職人のソールリペア


技と遊び心が共存するリペアカルチャー

特に印象的だったのが、イタリア職人と日本職人によるリペア対決。

同じソールを使っているにもかかわらず、仕上がりの表情が全く異なる。

カーブの取り方、磨きのタッチ――国境を越えた感性の差が、靴の表情を変えていた。

職人の手が語るもの、それは技術だけでなく美意識でもある。

リペアという行為の中に、クラフトとアートの境界を越える創造性が息づいていた。

擦り減ったソールを張り替える瞬間

“履き続ける”という選択 ― スタッフが実践するリペア事例展示

会場奥の展示コーナーには、ヴィブラムスタッフが実際に自分の靴をリペアした事例が並んでいた。

登山靴、ワークブーツ、スニーカー――いずれも長年履き込まれた跡が刻まれている。

張り替えられたソールは新品のように輝きながらも、アッパーには使い続けた時間の痕跡が残る。

その“新しさと古さの共存”が不思議と美しく、まさに「リペア=再生」という言葉の意味を体現していた。

スタッフの中には、山歩き用のトレッキングシューズを何度も張り替えて愛用している人もいたという。

「新品に買い替えるのではなく、自分の足に馴染んだ靴を直して履き続けたい」。

そんな想いが一足一足に込められているのが伝わってくる。

展示を見ていると、修理という行為が単なるメンテナンスではなく、

“ものとの関係を育てる時間”でもあることに気づかされる。

靴を長く使うことが、ライフスタイルの一部として根付いている――そんな文化を感じた。

スタッフ愛用のVANS OLD SKOOL
スタッフ愛用のNIKE DUNK LOW

まとめ

中目黒で開催されたヴィブラムのリペアイベントは、

“新しく買う”ではなく“生まれ変わらせる”という価値観を体現していた。

ソールを張り替えるという行為の中に、職人の技、文化の交流、そして未来へのヒントがある。

長く履くことは、地球を大切にすることでもある。

ヴィブラムが掲げる「#REPAIR IF YOU CARE」という言葉が、

今日の一歩を、また次の旅へとつないでいく。

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ライター:
.HYAKKEI特派員 ケンスタ