小枝を切る。
薪を割る。
あるいは骨付き肉を叩き切る。
アウトドアの場ではおしゃれなナイフよりも、
斧や鉈のような分厚くて武骨な刃物が便利な時もあります。
サバイバルの場はもちろん、きちんと整備されたキャンプ場でもそれは同じです。
キャンプ場で買った薪でも、ひと手間かけて丁寧に割って細い薪にすることで、火起こしが格段に楽になります。
手斧はホームセンターなどに行けば、数千円程度でも購入可能です。
しかし、おしゃれキャンプが流行る昨今では、やはり斧もスタイリッシュな製品を選びたいもの。
そこで今回紹介したいのが、
北欧はスウェーデンの斧メーカー、「グレンスフォシュ・ブルーク」です。
針葉樹林と清く澄んだ水、良質な鉄材に恵まれた北欧で、
1902年から斧をはじめ伐採用品の製造を行ってきたグレンスフォシュ・ブルーク。
林業が機械化されて斧の出番が減りつつある中でも技量に誇りを持ち、
職人がひとつひとつ斧を打ち鍛えてきました。
昨今では欧米をはじめ、
日本中の薪ストーブユーザーや林業化に愛用されています。
現在、日本国内で販売されているグレンスフォシュ斧は、
薪割り専用の大型斧から工芸用の手斧、アウトドア用の手軽な品まで10種類以上あります。
今回紹介するのは、グレンスフォシュの斧では最小のモデル「ハンドハチェット」。
柄の長さは26㎝と、文字通り片手に収まるサイズの手斧であり、値段は送料込みで15,000円ほど。
刃には革製のシースがはめられ、柄には「斧の本」が装着されています。
本場のスウェーデン語版をはじめ、英語にドイツ語、そして日本語版と、
世界では5か国語版が存在しており、その人気を示しています。
内容はグレンスフォシュ斧の各モデルの紹介と、使用方法の詳細です。
それぞれの斧に合った枝打ちや薪割り、研ぎ直しの方法、薪の乾燥法などが細かく紹介されており、
キャンプや火起こしの助けになります。
さて、グレンスフォシュのハンドハチェット。
柄は北米産の広葉樹・ヒッコリー材。
独特の曲線美によって、手になじみやすく力を込めやすい。
そして、刃の峰には「MM」のイニシャルがあります。
グレンスフォシュの斧は、すべて職人がその手で鍛造した物。
彼らは入魂の逸品にイニシャルを彫り込みます。
前述の「斧の本」によれば、
MMのイニシャルはマティアス・マッツソン氏の製品ですね。
研ぎ澄まされた刃先によって、紙をしなやかに切ることができ、
腕の毛までも鮮やかに剃り落とせます。
粘り強い常緑樹の枝も、スッパリと断ち切れます。
キャンプ場などで購入できる杉の薪を、手ごろな大きさに割るにも適度な重さ。
もちろん、豚の骨付きカルビを鮮やかに切り分けるなど、
ダッチオーブン料理の準備にも一役買ってくれることでしょう。
なお、使用する際に注意したいのは、必ず木製の台の上などで使うこと。
撮影サイトは砂利の地面だったので、別の丸太を置いた上で斧を振るいました。
これは、刃を傷めないために重要なポイントとなります。
グレンスフォシュ最小の斧がハンドハチェット。一方で、大型の斧が「アメリカ式伐採斧」となります。
柄の長さは90㎝以上、重さは数キロとキャンプの場に持ち込むのは少し大変ですが、
樹木の伐採や切断、あるいはある程度割りやすい針葉樹を薪にする上で大きな助けとなります。
こちらは日本国内では流通しておらず、購入には個人輸入の必要があります。
アメリカから輸入された同製品、付属の「斧の本」はもちろん英語表記。「UN」のイニシャルから察するに、担当職人はウルリック・ニルソン氏でしょう。
このような斧で丸太を切断する際の注意点は、必ず「左右から斜め45度」で切り込むこと。
キュウリでも切るような感覚で直角に斧を振り下ろせば、丸太に跳ね返されるばかりで、決して切り込めません。刃を傷めてしまう恐れもあります。
半分程度切り込んだら丸太を裏返し、再度45度の角度に切りこむことを繰り返しつつ切断へと至ります。
斧で切断した丸太は薪割り台の上には立てられないので、二股の丸太などの間に挟むなどして固定してから割りましょう。
ただ、こちらの「アメリカ式伐採斧」は文字通り伐採専用の、刃が薄めの斧です。
杉やヒノキのような割りやすい樹種はともかく、広葉樹のような粘り強い樹種の薪を割るには向いていません。
伐採をする際には、刃の薄い大型斧、薪割りは刃の分厚い斧、手軽なキャンプでは小型の手斧と使い分けてください。
グレンスフォシュ製品について、それぞれのシーンでのおすすめモデルを紹介するならば、キャンプでは今回紹介したハンドハチェットかワイルドライフがぴったりです。
木工にはカービングかブロード、
薪割りには大型薪割りか薪割り槌、
伐採にはスカンジナビアンフォレストかアメリカ式伐採斧が適当でしょう。
使うシーンや自身の体格、体力などを考慮した上で、ベストな斧を選んでいきましょう。
・手の平を傷めないため、使用の際は必ず皮手袋やゴム球つき軍手をはめてください。安物の軍手では、手荒れの恐れがあります。
・必ず木製の台の上で使用してください。土や石、コンクリートの上で使えば、刃欠けや事故に繋がります。特に、刃物マニアを自称する人から借りた刃物を安易に石の上で使えば、人間関係のトラブルに繋がりかねません。
・斧は銃刀法に該当するような刃物ではありません。しかし、持ち運びの際は専用のケースや木箱などに入れ、安全を心掛けてください。
以上のポイントに注意して、安全なアウトドアを楽しみましょう。