大雪の中で考える、都心と里山のコミュニティーのあり方

1月18日、関東各地で降った雪は、東京でも交通や生活に大きな影響を与えました。雪によって本数の減った電車に乗るために、各駅には外まで長蛇の列ができ、交通機関は麻痺。この記事を読まれている皆さんの中にも、ヘトヘトになりながら会社へたどり着いた東京の人も多いのではないかと思います。

暖冬と言われた中でのドカ雪

僕が住む八ヶ岳では東京の5~6倍となる30cm以上の積雪となりました。
(住んでる場所の公式記録が出てませんが、自分の庭の目視が目安です)

今年の冬は例年に比べて暖冬で、八ヶ岳の山頂はちっとも白くならず、霜がなかなか降りないので野沢菜もつけられないという声が近所からよく聞こえてくるくらい(信州で親しまれている野沢菜は、霜が降りるくらいの気温になって初めて作り始められるそう)。

その一方で、「暖冬の時はドカ雪が降る」とか、「カマキリの巣が例年よりも高い位置に出来ている時は雪が多い」とか、「2年前の災害レベルの大雪の時はカメムシが大量発生したが、今年も多いので雪が多いかも」など、いろいろなうわさもチラホラ。

前日から近所の人たちとの立ち話で、「そろそろ来るよ」とか「明日朝あたりにドカッと降るんじゃないかな」と言われ、「ほんとかなあ?そんなにすごいのかな?」と思いながら、朝起きて窓を開けると・・・

昨日とはまったくの別世界に茫然。
事前に忠告されていたものの、たった一晩でここまで降るとは。そして自然現象に付随する言い伝えは単なるジンクスや噂なんかではないこともよく分かりました。

ちょっと玄関の手前をかき分けてみると・・・

すでに30cmは降っています。しかもまだまだ止む気配はありません。
SORELのブーツを履き、雪の中に足を突っ込んでみると、ブーツの上まですっぽり。ブーツの中に雪が入るか入らないかぐらいのところまで埋まってしまいました。

とにかく除雪を

「・・・車だせないじゃん」としばらくあたりをボーっと眺めつつも、お世話になっている大家さんに言われたことを思い出し、すぐに行動を開始します。

・雪は降っている間にこまめに除雪。
・踏み固められると、後で氷になるので、なるべくコンクリートが見えるまで。
・幅広の除雪用ショベルを使い、腰に負担をかけないように少しずつ運ぶ。
・雪を運ぶ場所は盛られることを考えてなるべく庭の奥へ。

半分寝起きの状態でしたが、ダウンジャケットを着てすぐに作業を開始。とりあえず車までの道を確保しようとショベルを手に雪をかき分け始めました。

家庭用除雪機が羨ましい

作業を進めながら1時間。お隣はどうしてるんだろう? 家を出たところの道はどうするんだろうか? みんなで作業するんだろうか? などと考えていながら雪をかき分けていると、向かいに住むおじいさんが家庭用除雪機を押して登場。 除雪機を押しながら、自宅の道を手慣れた操作でどんどん除雪していきます。

「・・・うらやましい」

完全に子供がショーウィンドウ越しのおもちゃを欲しがる眼差しで見入りながらも、ホームセンターで買った1500円のショベルを雪に差し込みます。

向かいのおばあちゃんが声をかけてくれました。

「けっこう積もったね~。初めての雪かきはどう?」
「すごいですね。横浜に住んでた時は雪かきなんてしたことなかったので・・・ 車道はどうするんですか?ここも各自でやるんですか?」
「こういうときはたぶん○○さんところがブルドーザー出してくれるだろうから大丈夫だよ」

ブルドーザー??

しばらくすると、本当にブルドーザーがやってきて車道の雪を一気にどかしていきました。私物のブルドーザーだそうです。

大きな公道には、行政の除雪車が入りますが、より小さな車道や集落内の通りでは、個人所有の重機を出すなどして、集落や“区”と呼ばれる単位の住民同士で助けあっています。
共同作業に伴う費用などは、毎年区民で出し合ったプール金のような会費から出し、共同作業に必要な役割や決め事は、区長や常会長といった方々を中心に、みんなでコミュニケーションを取りながら決めていきます。

なにかが起きた時、なにをすべきか? ここでは助けあいのコミュニティーができているわけです。

目の前の大雪を見ながら、東京の混乱について考える

午前中には大まかな除雪作業は済み、町には人や車が行き来するようになりました。
当然雪がなくなったわけではありません。40cmくらいだった雪がどかされ5cmくらいの高さになったくらいです。それでも町の人は、普段と同じように(もちろん移動スピードは普段よりも遅いですが)、仕事に出たり買い物へ行ったりしています。

一方、スマートフォンには、5cmの積雪によって東京の交通網が大混乱しているニュース速報が飛んできます。
そんなニュースを眺めつつ、雪が降っても共同で課題をさっさと片付け、平然と各々の生活を続けている人たちを見ていると、なんらかの災害が起こっても地方の方が助かる確率が高いのではないかなと思えてきました。

もし通勤するだけでもパニックになるような交通網の状態で、避難しなければいけない事態が重なったとしたら?もし隣人のことや周辺環境のこともろくに知らずに災害が起こったとしたら?

災害にもいろいろなケースがあるので一概には言えません。しかし、里山生活の中で行われている共同作業を見ていると、不思議と安心感を抱いてしまうのでした。

もしまた大雪が降ったら、なにがなんでも会社へ向かう前に、地域や隣人の方々との接点を増やす良いチャンス、と捉えてみるのもいいかもしれません。

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ライター:
津田 賀央