先日「リアル・オートキャンプ」の話を書かせていただいたオートパッカーのイナガキです。今回は一年でもっとも寒くなる二十四節気の「大寒」を迎え、野遊びへの意欲がちょっと低下気味という人でも、そのハートに「ボッ」と火がつく、ワイルドライフのレポートをお届けにきました。
BSで放映されているワイルドライフ(野生動物の生態観察)には、シロクマやオオカミのように、誰もが簡単に見られるものではない生き物たちがよく取り上げられていますが、わたしたちの身近な場所に棲む野鳥を観察することも、実は立派なワイルドライフにあたります。
バードウォッチングのトップシーズンは、広葉樹が葉を落とす11月下旬から、新緑が芽吹く前の4月中旬といわれています。もちろんターゲットになる野鳥にもよりますが、いちばんの理由は、木に留まった姿が見つけやすいからでしょう。
しかし、わたしには別の大きな理由があります。
それは「猛禽(もうきん)」。
写真はコミミズクというフクロウの仲間ですが、冬になるとシベリアから日本に飛来し越冬します。冬鳥といえばカモやハクチョウが思い浮かびますが、実はエキサイティングな猛禽類も、この時期に日本をめざして集まって来るのです。
中でも際立った迫力を見せてくれるのが、世界最大級の猛禽と呼ばれ、絶滅危惧種にリストアップされているオオワシです。普段わたしたちがテレビや雑誌で目にするオオワシは、流氷に乗って北海道にやってくる個体ですが、実は東北や関東地方を飛び越えて、琵琶湖の湖北で越冬を続ける1羽のオオワシがいます。
遠方にお住まいの読者の中には、「なんだ、琵琶湖か~」と思われた人がいるかもしれません。しかし屋久島に残る1本の縄文杉を見るために、全国各地から人が集まります。
実は琵琶湖のオオワシは、日本に飛来するオオワシの中では、もっとも南の地域で越冬する個体といわれ、既にこの地に来て10年以上の月日が経ちます。年齢から推察すると、もう1年1年が大切という状態で、それを危惧して遠く九州や四国から、多くのワイルドライフを愛する人々が琵琶湖へと足を運んでいます。
さて。オオワシは「海ワシ」と呼ばれ、ここではコイやブラックバスを主食にしながら、日中の大半を山本山の山麓に留まって過ごします。狩りに出るのは不定期で、こういうシーンに出会えるかどうかは運次第… その意味からすると、オオワシ観察はまさに「一期一会」ともいえるでしょう。
ただ、バードウォッチングにかぎらず、ワイルドライフは生き物の習性を知ることが大事です。それが分かってくれば、狩りに出かける前のちょっとした仕草にも気がつくようになり、シャッターチャンスが広がります。
幸いなことに琵琶湖の場合は、山本山のすぐ近くに「湖北野鳥センター」があり、初めて手ぶらで訪れても、センターからフィールドスコープを覗けば、山本山に留まったオオワシを観察することができますし、ビデオシアターではオオワシの狩りの様子を記録した貴重な映像も見られます。もしこの記事をご覧になって、興味を持たれた方がおられましたら、まずは湖北野鳥センターに足を運んでください。
ちなみにオオワシが観察できるのは11月下旬から2月初旬にかけてですが、行動が安定しているのは1月中旬で、今回の撮影は1月22日に行いました。
ちなみに、湖北野鳥センターの反対側は琵琶湖に面しており、普段はこういう景観が見られます。またこの一帯は夕陽が美しいことでも知られており、オオワシだけでなく琵琶湖の懐の深さを存分に味わうことができるエリアです。
次回は「舞台裏」のお話です。どんなカメラで野鳥の写真を撮っているのか、またどんな装備で真冬の寒さを克服しているのか、オートパッカー仕様のキャンピングカーについても言及していく予定です。