(こちらは2020年9月28日に公開された記事になります)
アウトドアでは絶大な人気を誇る「ゴアテックス」。高品質や防水のイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。そこで.HYAKKEI編集部が、ゴアテックス ブランドの性能や仕組み、開発の裏側や製作秘話を連載でご紹介します!今回は、2020年秋リリースの新テクノロジーに携わる、アメリカ ゴア社 開発者による誕生ストーリーを聞いてきました!
前回の記事はこちら。
ゴアテックス プロといえば「極限を征する」をキャッチコピーとした、プロの登山家やコアなアウトドア愛好家向けのシリーズ。最大の特徴は、ブランドの顔とも言える「優れた防水透湿性」です。研究所だけでなく、アスリートによる現場での製品テストを通して、2007年の登場から今日まで進化し続けてきました。
そんなゴアテックス プロは、2020年 秋さらにアップデートし「ゴアテックス プロ プロダクト ネクストレベル」をリリースしました。新たに開発されたのは、耐久性、ストレッチ性、透湿性 それぞれに優れた3種類のテクノロジー。これらをメーカーが適材適所に配置することで、各アクティビティに最適化されたウェアの製作が可能となります。
この開発には、一体どのような経緯があったのでしょうか?それぞれ見ていきたいと思います。
今回のアップデートにより、ゴアテックスプロの生地は従来の頑丈さを維持しながら、最大20%のストレッチ性の向上に成功したと言います。そのきっかけは、ユーザーからの声だったそうです。
「過酷な環境下においてウェアに何を求めるかプロのユーザーにインタビューした際、耐久性への要望はありましたが、ストレッチ性を要望する人は殆どいませんでした。」
そう話すのは、ゴアテックス ストラテジックマーケティングのララ・ヴィットマン 氏。
「疑問に思った私たちはヒアリングを続けました。すると、彼らは、“(ゴアテックス プロ基準の)耐久性とストレッチ性の組み合わせは不可能” だと考えていたことが判りました。そのため、ストレッチ性について触れなかったのです。」
「また、耐久性を犠牲にしてまで、ストレッチ性を取り入れたいとは考えていなかったようです。」
厳しい環境下では、ウェアの「頑丈さ」は命と同じくらい重要です。ストレッチ性と頑丈さのトレードオフだと考えた場合に、アスリート達が頑丈さを選ぶのはうなずけます。
「彼らが初めて我々の完成品を目にしたとき、ストレッチ性と頑丈さが両立した製品であることを疑っていました。しかし、出来上がったジャケットを身に着けた時は、本当に驚いていましたね。」
アスリート達からこのフィードバックをもらった瞬間こそ、ララ氏の中で「耐久性にストレッチ性が加わることで、厳しい自然環境下での快適さに大きな進歩がある」という仮説が確証に変わったことでしょう。
ストレッチ性と耐久性を両立する開発に関して、ゴアテックス プロダクトスペシャリストのマーク・マッキニー氏はこのように振り返ります。
「従来の開発方法では、ストレッチ性と耐久性の両立には課題があり、この解決が最もハードでした。」
今回アップデートした”耐久性”に関しては、ゴアテックス ブランド内で最高レベルであるとララ氏は言います。この進化のヒントは、ハイスピードでのアクティビティを伴うユーザーからのフィードバックにありました。
「木々が多く整備されていない雪山を滑るユーザーからは、腕や肩に衝撃を受けるという意見もありました。彼らは想像以上の激しいダメージを受けていたのです。」
彼らが体験する瞬間時速は100km以上。このような状況下に、彼らの体は生身で置かれているのです。ウェアが破れるどころではありません…。
「まるで腕に高速のムチを当てるような状況。日常ではありえない、かなり特殊な状況です。そこで、こういった状況でも耐えうる機能が必要だと考え始めました。」
従来のゴアテックス プロの生地は40デニール以上の厚さがありましたが、今回のアップデートで、最も軽量な30デニールが選択肢に加わりました。つまり、ストレッチ性と耐久性がアップしただけではなく、生地が薄く軽くなることで、透湿性もアップしたのです。激しい強度環境での直接的な動きをサポートするだけでなく、衣服内環境もさらに快適に保つことが出来るようになりました。
数字だけだと大きな変化はないように感じるかもしれません。しかしゴアテックスプロ基準の高レベルの耐久性や防水性を担保しながら、より生地を薄く、より快適にすることの難しさは、想像に容易いのではないでしょうか。
耐久性と透湿性について、ララ氏は次のように言います。
「生地を薄く軽くすると、その分衝撃に弱くなりそうですよね。しかし耐久性を維持しつつ、より軽量で高い透湿性を実現したのが今回の進化です。」
ゴアテックス製品は1つ1つの機能性が高いだけではなく、バランスが優れていることがわかりますね。
ユーザーの声をきっかけに大きく進化した「ゴアテックス プロ プロダクト ネクストレベル」ですが、なんと4年の歳月をかけて開発されたそうです。
ゴアテックス ブランドほどの技術力があれば、原価を下げより多くの消費者に届けることで、利益を上げることも可能でしょう。しかしそうではなく、”極限を制する”というキャッチコピーを掲げ、資金も時間も、あくなきクオリティの向上に費している事実こそ、ゴアテックス プロがアスリート達から信頼を集める理由なのだと思います。
アスリート達が命がけの挑戦をし続けるその背景には、同じ志でモノづくりに取り組む、ゴアテックス プロの妥協を許さない研究や挑戦がありました。極限に挑戦する使命感が伺えます。
本テクノロジーを取り入れた製品の発売は、2020年 秋を予定されています。”極限を征する” 「ゴアテックス プロ プロダクト ネクストレベル」によって、私たちが見ることが出来る世界が広がることを期待しています。
前回の記事はこちら。
ゴアテックス プロ プロダクト ネクストレベルの詳細はこちらをご参照ください。
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