第二次キャンプブームと呼ばれている昨今。実は、キャンプブームは終了し、ブームからカルチャーへとシフトし、日本のアウトドアカルチャーの一部として、すでに定着しています。キャンプブームとは何か?なぜ文化にまで昇華したのかを、アウトドア歴20年の筆者が解説していきます。
第一次キャンプブームは、1990年代に起きました。最盛期にはキャンプ人口が1580万人まで上った、第一次ブーム。その大きな要因は、バブル景気を経て人々が経済的に豊かになり、車が一家に一台持てるようになったこと。車でのレジャーの延長で、さまざまなアウトドアアクティビティが人気を伸ばした中に、キャンプがありました。また、コールマンなどの大型海外アウトドアブランドも上陸し、欧米式のキャンプスタイルがもたらされたことも要因です。
これだけ隆盛を極めた第一次キャンプブームが、なぜ廃れたのでしょうか。諸説ありますが、大きな要因はキャンプ場の整備不足や、マナーの浸透不足による事故の多発、バブルの崩壊による景気の悪化、パソコンやネットなど競合する娯楽の登場と言われています。道具も発展途上で、キャンプスタイルの多様性がなかったこともユーザー離れの要因でした。
2010年代前半から始まったと言われるのが、昨今の第二次キャンプブームです。オートキャンプ人口は、日本オートキャンプ協会が発行する「オートキャンプ白書2020」によると、7年連続で増加し、2019年時点で860万人までに至っています。この盛り上がりはなぜ起きたか、多くの要因がありますが、その一部を紹介します。
第一次キャンプブームの時代に、子どもだった世代が大人になり、経済力を持ち、子育てやノスタルジーなどさまざまなきっかけで、キャンプに舞い戻ったことも要因です。
キャンプ場の高規格化や多様化、キャンプギアの多様化、低価格化も要因の一つです。
それにより、キャンプスタイルも多様化し、ファミリーに限らずソロや女性だけのグループなど、参加できる層も増えました。道具の進化、充実化により、冬キャンプなどハードなシーンの敷居も下がっています。
パソコンとネットの登場で、第一次ブームではキャンプ離れが起きましたが、第二次ブームでは、Instagram やYouTubeなどのSNSとインフルエンサーの登場により、キャンプの魅力を知るきっかけが増えました。
また、ガレージブランドと呼ばれるインディーズの新興アウトドアブランドも登場し、SNSから火が付き、熱狂的なファンを生み出しブームを牽引しました。
環境問題の進行により、SDGsの採択など経済活動と環境への配慮のバランスを見直す動きが世界的に広まり、人々の自然志向が高まったことも要因です。デジタルデトックスという言葉が生まれたように、急速なITの発展によるデジタル疲れへの反動もこの動きを後押ししています。
2011年の東日本大震災などで多くの人が実際に災害を経験し、防災意識が高まったことも要因です。有事の際に、キャンプのスキルや道具が役立つこともあり、ついでに防災に備えられるレジャーとして注目されました。
第二次ブームがいつまで続くかと業界でささやかれていたタイミングで発生したコロナパンデミックが、奇しくもキャンプ人口を増やす結果となりました。3密を回避しやすいレジャーとして認知され、「おうちキャンプ」など新しい楽しみ方も登場。各企業もチャンスと見て参入し、市場がさらに広がりました。
キャンプブームがいつまで続くかという疑問を持つ方も多いですが、キャンプはすでにブームを通り越し、文化として定着しています。諸説ありますが、その4つの理由を紹介します。
キャンプの盛り上がりによる需要のアップや、コロナによる本業の不調などを背景に、自動車やファッションなど、さまざまな業界がアウトドア市場に参入しています。逆にアウトドアブランドが食品やインテリアといった他の業界に進出するなど、相互に業界を盛り上げており、キャンプ人気をより根深いものにしています。
ここ数年で起きている変化が、他のアクティビティとのクロスオーバーの加速。マンネリの回避や子どもの親離れをきっかけに、釣りや自転車、サウナやカヌー、DIYなどをキャンプの中で楽しむ方が増加し、相互にユーザーを増やしています。こういった楽しみ方の多様化もユーザー離れを起きにくくしている要因です。
メディアなどでネタとして取り上げられることの多くなったキャンプですが、キャンプ人口やGoogleなどの検索エンジンでの検索数は、急にではなく、じわじわと増えて続けています。急に注目されて流行ったものは廃れてしまうもの。その逆も然りで、大きな問題が起きなければ、キャンプ人口が急減することはないでしょう。
世界的な自然志向の高まりやSNSでの露出を受けて、キャンプ人気は日本にとどまらず、中国や韓国、台湾、マレーシアなど東南アジアでも加熱しています。キャンプ用品の輸出と輸入も増加の一途を辿っており、世界的に市場が拡大中です。国内外で新興ブランドも続々誕生しています。
キャンプ人口の増加で、必然的にマナーの悪いキャンパーが増えたことが問題になりました。中には、ゴミの不法投棄や直火など焚き火マナーの違反、騒音などが増え、対応がしきれず閉業に追い込まれたキャンプ場も存在します。貴重な遊び場の持続のためにも、マナーを守りましょう。
キャンプ人気のもう一つの弊害が、人気のキャンプ場の予約が困難になってしまったことです。逆に、遠方のキャンプ場に足を運ぶキャンパーも増えたことにより、地域活性化のきっかけになっている一面も。続々とキャンプ場がオープンしているので、こちらにも期待したいところです。
キャンプを楽しむ方はもちろん、キャンプに関わる仕事をしている方々のライフスタイルを豊かにするキャンプ。
今後もそうあり続けるために、一人ひとりがマナーを守りながら、自分が本当に楽しいと思えるキャンプスタイルを見つけていきましょう。
日本のキャンプ文化がさらに高いステージに上がれば、日本食やアニメのような世界に誇れる日本のカルチャーとして、発信される日も近いかもしれません。