• キャンプや登山に関わる人々へのインタビュー記事一覧です。自然に魅せられたアウトドアフリーカー、自然と共に生きるアスリート、熱い信念を持つオーナー等、その想いやヒストリー、展望など、写真と共に丁寧にお伝えします。今後の人生の選択肢のひとつとなるヒントが、見つかるかもしれません。
  • HOME
  • 記事一覧
  • 八ケ岳の麓で働いて8年、仕事も趣味も一緒になった/有機農家 池淵崇さん

八ケ岳の麓で働いて8年、仕事も趣味も一緒になった/有機農家 池淵崇さん

「もう畑がおもしろくて仕方ないです。ニンニクを植えるにしても、どの畑に植えるかとか、土壌をよくするためにどの堆肥を入れるかとか、考えれば考えるほどおもしろいんです。読みが当たった時はヨッシャー! ってなりますね。畑が仕事で趣味。畑のことばかり考えてます。」

雄大な八ヶ岳連峰のふもと、長野県原村にある大きな大きな畑。毎日たっぷりの日差しを浴びて、のびのびと育つ野菜たちに、溢れんばかりの愛情を注いでいる農家さんがいます。ぶっちーさんこと池淵崇さん、43歳。農家歴8年。有機農法にこだわって作物を育てています。

そんな池淵さん、通勤も仕事場も天国。

「八ヶ岳から出てくる日の出とかね。癒されます。八ヶ岳の向こうから光がパァーって畑に射してくるんです。夕日が真っ赤になって沈んでいく光景もきれい。冬もいいです。この辺の木が全部凍って樹氷になるんですけど、すっごいきれいです。」

(提供写真)畑から。日の出前の八ヶ岳連峰。
(提供写真)畑から。日の出前の八ヶ岳連峰。

今は畑が遊び場であり、職場でもある池淵さんですが、始めた頃は農業に興味がなかったそうです。なぜ、こんなに畑が楽しくなったのでしょう。その秘密に迫ります。

ここまで農業が楽しいとは、僕も思っていなかった。

池淵さんは兵庫県に生まれ、広島県の大学に進学してPCプログラミングに没頭。卒業後は、プリント基盤メーカーやエンジニア派遣会社で営業や人事として働きました。神奈川から広島に転勤になったとき、いろいろとうまくいかないことが続きます。

その頃、社長が急に言いました。

「池淵くん、農業やんない?」

その一言がきっかけで、農業未経験のまま八ヶ岳に移住、農家の道へと進むことになります。

――土をいじる生活って、それまでのキャリアとだいぶギャップがありますよね。

「やっぱり最初は、土をいじる生活にすんなりとは入れなかったですね。2011年に移住して、ゼロからはじめたわけですし、当時は農業に興味なかったので(笑)。正直ここまで農業を続けるとは僕も思っていなかったし、会社も思っていなかったと思います。」

――畑はどうやって見つけたのですか?

「会社の人の知り合いが長野県の諏訪市にいて、その方に原村でセロリ農家の方を紹介してもらい、こっちに来ました。今僕がやっている畑も、そのセロリ農家さんからお借りしてはじめた畑。今は原村のあちこちに7カ所の畑がありますが、最初がここ。一番思い入れのある畑です」

その畑で、夏はトウモロコシを栽培。『原村高原朝市』や、北杜市のスーパー『ひまわり市場』などに卸しているそう。
その畑で、夏はトウモロコシを栽培。『原村高原朝市』や、北杜市のスーパー『ひまわり市場』などに卸しているそう。

――農業の“の”の字もないまま、原村に来て農家に!?

「そうです。最初に借りた畑は違いますが、ほかの畑は荒れていた“耕作放棄地”をお借りしているので、それこそ開墾からはじめたところもあります。でも、そういった耕作放棄地も、手を加えることでだんだんと生える草の種類が変わって、土も変わってきて。しめしめ、よしよし、と(笑)。それはもうやりがいを感じましたね」

――ノウハウはどうやって学んだんですか? 素人がいきなり畑を前にして農作物を作るのってとても大変だと思うのですが。

「最初はセロリ農家さんにちょこちょこ教わり、2年目からは、『安曇野パーマカルチャー塾』で自然農を教わったんです。そのあと、松本市にある『(公財)自然農法国際研究開発センター』と『信州ぷ組』という新規就農者のための団体に出会って。自分よりちょっと上の先輩が農業で奮闘していて、その姿を見て、俺もやんなきゃ! って。有機農法で食べていくためには今のまんまじゃ甘い! と、焦りを感じました」

――農家としてのやる気スイッチが入ったんですね。

「他県から移住してきて農家になった人が多い団体なんですが、その環境がとても刺激になりました。なんだろう、目のぎらつき方がみんな違ったというか。農業は先行投資も大きくて、トラクター1台400万とか、みんな借金をしてはじめているから。自分は大家さんにトラクターをお借りしているし、基本機械はまだ揃っていなくて。肉体でカバーしているところが大きいですね。」

育てた野菜は、ほぼ池淵さんひとりの手作業で収穫していく。本当に腰の折れる作業です
育てた野菜は、ほぼ池淵さんひとりの手作業で収穫していく。本当に腰の折れる作業です

「そのうちに、だんだんと農業にのめり込んでいきました。今はまだ会社に所属しながら農家をやっていますが、ゆくゆくは独立していく話で会社も応援してくれています。」

おもてなしの心をつめた“青空レストラン”を始動

おいしい野菜、みんなが笑顔になる野菜を作る有機農家としての道を突き進んでいる池淵さん。2017年から、インターネット接続サービスのSo-net(ソネット)が行うサービス「いきつけの田舎touch」を介して、「高原野菜の収穫と青空レストランランチ」というイベントを開催し、案内人として活動しています。

(提供写真)
(提供写真)

「高原野菜の収穫と青空レストランランチ」は、野菜が土に埋まっているところから、食べるところまで、一度に体験できる内容です。収穫する野菜は、トウモロコシやにんにく、ほおずきなど、その時期ならではの高原野菜。収穫のあと、プロの料理人による採れたて野菜を使ったアウトドアランチをいただきます。帰りは高原野菜のお土産付き。

「都会の方が畑の野菜を食べると、『スーパーで買う野菜は味がしない。でも、この野菜は味がきちんとする。』とびっくりします。常連さんの方ですと、大量に買い込んでいかれて知り合いにおすそわけするような方もいますね。料理していただける料理人の方も素材の味をそのまま生かして作っていただけるので、ますます僕もやりがいを感じますね。」

(提供写真)
(提供写真)

――参加される方、参加を考えている方に、何か伝えたいメッセージはありますか。

「畑は安全なところ。危険なものがないので、小さいお子さんはもちろん、大人も童心にかえるように、のびのびと楽しんでいただけたら嬉しいです。ねずみがいたり、もぐらが堀った穴があったり、虫を触ってもらったり。ほかにも、耕した土の柔らかさを肌で感じたりもしてほしいですね。東京はコンクリートばかりですから、裸足で土の上を歩いたことのない方が意外と多く、感動される方も多くて。昔は自分もそうでしたから、来られるみなさんには、“本来の土”に触れてみてほしいです」

――ほかに今後「いきつけの田舎touch」でやってみたい体験イベントはありますか?

「トウモロコシの迷路を作ってみたいです! とても手が足りなくて今はできないけれど、トウモロコシは自分より背が高くなるから、行き止まりとか作って、その中を歩いてもらったりしてね(笑)。アイデアはたくさん浮かびます」

農家さんの顔を見て、「この人が手塩にかけて育てた野菜は絶対においしい!」と直感的に思うときがあると思います。池淵さんのはじけるような笑顔、土でくすんだ作業着、作物を見つめる真剣なまなざしは、まさにおいしい野菜を作る農家さんそのものでした。

そんな池淵さんが案内人を務めるイベントが、9月23日 (日)に開催されます。集合場所は、雄大な山脈に囲まれた自然たーっぷりの場所、八ヶ岳文化自然園。ぜひ池淵さんの作った野菜、自分の手で収穫して味わってみてくださいね。絶対にほっぺたが落ちますよ。

(文:山畑理絵 / 写真:茂田羽生


■「さわる ふれあう 感動する」 いきつけの田舎touch
「土いじりから食育まで体験!高原野菜の収穫と青空レストランランチ」は9月23日 (日・祝)開催
https://www.so-net.ne.jp/touch/

体験一覧:
https://www.so-net.ne.jp/touch/feature/

■「ネットにつながる、世界が広がる」 ソニーのネット ソネット
https://www.so-net.ne.jp/access/special/sony_so-net/

■「“つながる”から未来を創る」 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
https://www.sonynetwork.co.jp/

関連記事一覧