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わたしの初やま|#01 一生付き合える存在との出会い『丹沢・塔ノ岳』

買い物や飲み会、旅行、友人と過ごす週末は楽しくて最高。単に楽しいのはもちろんだけど、手帳のスケジュール欄に友人との予定が埋まっていると、何となく一人ではない安心感や充実した生活の証も得られる気がしていた。

そう、つい最近までは。

でも今は、予定のない週末があっても寂しくなんかない。むしろワクワクするぐらい。だって大好きな山に行けるから! 暇を見つけては決まって次はどこへ登ろうと、山雑誌を開く。我ながら呆れるほど、すっかり山に取り憑かれてしまったようだ。

きっかけは、友人が山を語るときの生き生きとした表情

といっても、登り始めてからまだ1年そこそこ。それ以前は、山になんかこれっぽっちも興味がなかった。山ガールなる言葉が生まれ、空前の登山ブームが到来したときも、何が楽しくて山を登り下りするんだろうと冷ややかな目で見ていたし(笑)。なのに、だ。まさか自分がその山ガール(と言うには忍びない年齢になったけど…)になる日がくるなんて!

きっかけは、1年程前にとあるイベントにボランティアとして参加したときのこと。ちょうどその頃、勤めていた会社を辞めてしばらくの充電期間を過ごしていた。そして30歳を目前に控え、これからの人生ずっと付き合いたいと思える何かを探していた時期でもあった。だからこそ、イベントで出会ったある人の一言がひっかかった。

「一回山に登ってみなよ」

彼いはく、終わりの見えないハードな山道に嫌気がさすのに、時折現れる平らな道の、大地を踏みしめるその感触が気持ちよくて病み付きになるらしい。なんてニッチなところを突くんだろうと簡単には共感はできなかったものの、帰宅してから山について語る彼の生き生きとした顔を思い返すと、なんだか無性に山に登りたい気持ちに駆られた。

「うん、試しに山へ行ってみよ」

初登山、最初の難関は「早起き」?

タイミングよくアウトドアブランドで働き始めた主人を誘い、初山に選んだ先は神奈川県に位置する表丹沢最高峰の山、塔ノ岳。標高は1491m。登山道が比較的整備されていて初心者でも登りやすく、県下では一二を争う人気の山だ。

初心者向けの山とはいえ、今思えば知識も装備もほとんどなく、軽卒な山行だったかもしれない。非常時に必要なアイテムは何ひとつ持ち合わせてはいなかったし。それでも登山靴だけは用意し、あとは動きやすい服装に水分と食糧をしっかりとバッグに詰め込む。昔、遠足前夜の準備にワクワクしたように、明日見る山への期待で胸が高鳴った。

起床は朝の4時。朝が苦手なため早くも心折れそうになる。でも、小田急線の秦野駅から登山口のあるヤビツ峠まで向うバスは、登山シーズンは長蛇の列が並ぶらしく、早めの行動をせざるを得ないのだ。山登りの最初の難関は、早起きかも?(笑)。そうこうして秦野駅に早めに到着するも、案の定バスを待つ人たちで溢れかえっていた。予定より遅れてバスに乗り込み満員バスに揺られること1時間、ようやくヤビツ峠に到着。「さぁ、いよいよだ!」

バスで行くヤビツ峠までの道のりは急カーブの連続。この先の山道は一体どうなっているの?と期待と不安が入り混じる

バスで行くヤビツ峠までの道のりは急カーブの連続。この先の山道は一体どうなっているの?と期待と不安が入り混じる

想定外の辛さの連続・・・その先に

ヤビツ峠から塔ノ岳の頂を経て大倉に下りる表尾根コースをいざ進む。ネットで調べたところ、ヤビツ峠から塔の岳頂上までは約7km。この距離なら楽勝♪なんて甘っちょろい考えは、スタート後すぐにかき消されてしまった。平地と違い、たった1kmを進むのになんて時間がかかること! 次の地点までの距離が全く減らない看板を横目に、急な山道をひたすら登る、登る、登る。慣れない登山道と息が上がるほどの辛さに、自然と目線は足元に下がる。が、それが思考をさらにネガティブにさせる。もう帰りたい、やっぱり来なければよかった、二度と来るか!と何回心の中で叫んだか。

何回叫んだところで頂上への道は一向に縮まってはくれないので、こま目に休憩を取り、なんとかメンタルを保ちながら登り続けて1時間。二ノ塔の山頂近くまで来ると次第に視界が開けてきた。そして目の前には、青々とした新緑の山が幾つも連なる壮大な景色が! その遥か先に佇む富士山の堂々とした姿たるや、なんと美しい♡ 疲れた体には何よりのエネルギーになるし、それどころかさっきまでの辛さなんかすっかり忘れてしまうから不思議だ。辛いことは忘れて楽しい思い出だけを覚えている、都合の良い性格?が、また山に登りたいと思わせる要因の一つなのかも。そんなことを考えながら、また一歩一歩進んでいく。

雪をかぶった富士山がくっきり♪

雪をかぶった富士山がくっきり♪

何気ないできごとに、山の魅力を感じる

そういえば、普段街で生活している時、すれ違う他人に関心を向けることなんてない。ましてや会話を交わすことなどほぼ皆無だ。なのに、山で目にしたのはすれ違う人たちが挨拶を交わす不思議な光景だった。暗黙のルールみたいなものらしいが、人間関係が希薄なこのご時世、とても素敵な習わしではないかと思う。こんにちはの挨拶から、あともうちょっとだから頑張ってと励まし励まされ、よく登りに来るんですか?なんて会話が生まれる。老若男女問わず、同じ山を登る者は皆仲間。山は人情に溢れたあったかい場所なのだ!

二ノ塔を過ぎてからは、見晴らしのよい尾根沿い歩きに変わった。アップダウンはあるものの、秦野市街や南アルプスが一望できる景色に鎖場などのスリリングなポイントなどいちいちテンションが上がる。しばらく進み、ちょうどお昼時だったので鳥尾山山頂でお昼ご飯を食べることにしたのだが、ここでテンションはMAX値に達する。買ったばかりのバーナーでお湯を湧かしてカップラーメンを作ったのだが、これがまた驚くほど美味しいのだ! ジャンクフードなのに罪悪感は全くないし、温かいスープが五臓六腑に染み渡っていく。ご飯を食べてこれほど幸せな気分になったのは初めてだったかもしれない(笑)。高級料理も山で食べるご飯には勝てないな。

見晴らしのよい尾根歩きは不思議と足が軽やかに

見晴らしのよい尾根歩きは不思議と足が軽やかに

雲のない空はなんて清々しいんだろう。4時間ほどかけてようやく辿りついた塔ノ岳の山頂で、空を仰ぎながらまずはお天道様に感謝する。なにせ極度の雨女のため、これまでの野外イベントはことごとく雨と悔し涙を流してきたから。もしかすると、この初山が天気に恵まれていなければ次に登ることはなかったかもしれないので、晴れ男の主人にも感謝しておこう(笑)。

苦労して頂上に到着した頃には、既に筋肉痛に襲われていた(笑)

苦労して頂上に到着した頃には、既に筋肉痛に襲われていた(笑)

探し続けていた、わたしの「一生付き合える存在」

とにもかくにも、頂上に辿り着いた達成感、快晴のもと頂から眺める景色は私にとって何者にも代え難い経験であり、最高のご褒美だった。自らの意志で、自らの足でここへ来た者しか得られない山のご褒美。でもそれって、生きている間にあと何回味わえるのかな?と考えたら、何だかいてもたってもいられなくなった。きっとその時こそ、探し求めていた“一生付き合いたいと思える存在”と出会った瞬間だったに違いない。

日本には15,000以上もの山があるといわれている。ということは、その数だけ異なる景色と感動もあるばす! そんな期待と好奇心が、また新たな山へと駆り立てる。ありがたいことに、一生かけてもこの娯楽が尽きることはなさそうだ。

*わにぶち みきこさんのinstagramアカウント(@hirano_cham)
https://www.instagram.com/hirano_cham/

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